みずほ銀行は昨年、持ち株会社みずほフィナンシャルグループ傘下の信販大手、オリエントコーポレーションとの提携ローンで暴力団員に融資していた問題が発覚。これが引き金になり、他のメガバンク、信託銀行、地方銀行、大手生保、大手損保でも反社勢力に融資にしていた事実が次々と明らかになった。
これを受け全銀協は、反社勢力との関係を遮断するには、警察庁から暴力団の情報提供を受けることが不可欠と判断。警察庁が持つ暴力団情報のデータベースに接続できるようにする案を検討した。しかし、民間団体である全銀協による警察庁データへの接続には守秘義務などの面で課題があるとして調整は難航していた。
このため警察庁との接続は、預保を経由するとの案が浮上した。預保は金融機関の預金を保護するため、政府、日銀、民間金融機関の出資によって設立された認可法人で、経営が悪化した金融機関に対する資本増強や回収困難な債権の買い取りなどを行う。預金保険法に基づいて守秘義務を課せられていることから、警察庁が懸念する情報管理の問題がクリアできる。金融機関は新たな取引先になりそうな顧客が反社勢力かどうか、預保に照会する仕組みをつくる方針という。
●現場に任される反社勢力との取引解消
ところが実際には、警察庁への照会システムを構築しても、反社勢力との取引問題には容易に解消できない問題が山積しているのだ。
金融機関は融資や口座開設の取引開始時点で、自行の反社データベースを使い、顧客の属性をチェックする。しかし、顧客は自ら組員であると申し出ることはなく、たいていは女性の名前で開設するなどの偽装工作をしてくるため、気付かずに取引を行うことがある。
北九州市に拠点を置く特定危険指定暴力団・工藤会の壊滅作戦に福岡県警察が全力を挙げて取り組んでいる。10月9日には、掃討作戦の一環として工藤会の組員を恐喝の疑いで逮捕した。知人の女性に銀行口座の開設を要求したところ、この女性が応じなかったため、「殺すぞ」と脅した疑いだ。このように組員は銀行口座の開設に、知り合いの女性を使うという。
取引開始後に反社勢力関係者であると判明することはよくある。その場合、本店からは「取引を打ち切れ」と指示が出るが、実際に取引の解消の交渉に当たるのは支店や営業部に勤務する現場の担当者であり、支店長が出るケースも少ないといわれている。相手に「反社だから取引をやめる」と告げるわけにはいかず、ひたすら頭を下げるしかない。融資を断ったとたんに、黒塗りの車で自宅までつけられた行員もいるという。