“総選挙の争点”建設国債の日銀引受より有効な金融緩和策とは?
しかし、日銀の独立性を保持しつつ、さらなる金融緩和を実現する秘策がある。デンマーク中央銀行に倣ったマイナス金利の導入である。そこで今回、本サイトで10月5日に掲載した、デフレ脱却に向けマイナス金利の導入検討を求める以下の記事を再掲載します。
そう遠くない将来、「おカネを払って」おカネを預ける時代が来るかもしれない。
10月9日から14日までIMF(国際通貨基金)世界銀行年次総会【註1】が48年ぶりに東京・有楽町で開かれ、世界中から財務大臣・中央銀行総裁、そして大手金融機関のトップたちが集まる。こうした金融関係者の間でひそかに注目を集めているのが「マイナス金利」である。そこで今回は、デフレ脱却へ向けた金融政策を取り上げる。
日銀は9月19日、追加の金融緩和策を決めた。景気の先行き懸念から、13日に住宅ローン担保証券を買う量的緩和策第3弾(QE3)を導入した米連邦準備制度理事会(FRB)に追随したのだ。
具体的には、国債を買い入れる基金を短期の国債で5兆円、長期の国債も5兆円それぞれ積み増し、期間が長めの金利も下がるよう促そうという内容だ。安住淳財務相は「ある意味でサプライズで、大変よかった」と述べたが、円相場は一時値下がりしたものの、その流れは続かなかった。では、どうすればよいのか?
マイナス金利とは何?
8月24日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「世界の中央銀行が注視している」とし、「マイナス金利の世界に踏み込むデンマーク」というタイトルの記事を掲載した。
中央銀行のデンマーク国立銀行が政策金利の一部をマイナス金利にしたのは、欧州中央銀行(ECB)が利下げに踏み切った7月5日だ。同国では民間銀行が中央銀行に譲渡性預金(CD)で資金を預けることができるが、その金利をマイナス0.2%としたのだ。
おカネを預金したり貸したりすれば、利息がもらえるのが普通だが、マイナス金利とはそのまったく逆である。
債券市場でマイナス金利状態になることは時々ある。欧州の債券市場ではギリシャ、スペイン、イタリアの国債利回りが急上昇(価格は下落)するなか、信用力のあるドイツやオランダ、北欧の国債が買われ、マイナス金利が発生している。しかし、中央銀行が政策金利をマイナスにすることは極めて異例だ。
マイナス金利は投資刺激につながる
日本経済が復活するスタート台に立つには、デフレからの脱却、そして、高齢者世代から現役世代への所得の移転が避けて通れない。デフレ脱却には実力をはるかに超えた円高の是正と、投機マインドの刺激が必要条件になる。この視点で考えると、インフレ目標の次に打つ手としてマイナス金利は魅力的なはずだ。
デンマーク中銀がマイナス金利政策を採用した最大の理由は、為替の変動要因となる金利差を維持し、自国通貨クローネを対ユーロで安定させるのが狙いだ。
円もクローネと同じ理由で買われており、「マイナス金利」がその是正に役立つ可能性があるうえ、インフレ目標以上に投機マインドも刺激するだろう。もっとも、日銀の準備預金制度は当座預金で、CDはない。法律改正など制度面の対応が必要になるかもしれないが、検討する価値はあるのではないか。