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大塚将司「反メディア的! その記事、ダマされていませんか?」第2回

“総選挙の争点”建設国債の日銀引受より有効な金融緩和策とは?

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 民主党政権内では円高是正策として日銀に外債を購入させる構想が議論されているが、外債購入は“通貨の番人”である中央銀行の政策としては邪道だ。「王道」の金利政策で、やれることをとことんやるべきであろう。

インフレ時代の常識に縛られた新聞メディア

 それにしても、羹に懲りて膾を吹き続ける大新聞の記者たちには目を覆いたくなる。インフレ時代の常識に縛られ、デフレという時代の断絶に気づいていない。

 その右代表が9月16日付毎日新聞の社説である。「米追加金融緩和/バブルの教訓忘れたか」という見出しで、FRBの量的緩和策について「リーマン・ショックからまだ4年。行き過ぎた金融緩和が熱狂のエンジンとなり、破綻を招いた教訓を忘れるには、あまりにも短過ぎる。(中略)金融政策が限界に達したのは日本も同じだ。これ以上の緩和は弊害を深刻化させるだけで、打開策になどならない」とまで言い切っている。

 これほどではないが、大新聞の記者たちの多くは過度な金融施策への依存はバブルを招くという先入観に支配されており、金融政策について記事を書くとき、必ずと言っていいほど、バブル誘発のリスクを指摘する言い訳を入れている。

 たとえば、「米追加緩和、株高を演出―雇用に踏み込んだFRB」(9月15日付日経新聞朝刊3面)という解説記事は「バーナンキ氏がFRB理事時代の2000年代前半。同氏は当時のグリーンスパン議長とともにデフレを恐れるあまり金融緩和に大きく傾斜した。この策が住宅バブルを生んだと、リーマン・ショック後に批判された。今回、雇用に踏み込んだ金融政策を打ち出したことで、FRBはまた同じリスクを背負うのかもしれない」と締めくくっている。

 市場主義経済体制を抜本的に変革しない限り、投機マインドは必要悪だ。それを無視しては経済をインフレ状態に戻すことはできない。今、ジャーナリズムには現実を直視し、バブルの亡霊に取り付かれた状態から脱却することが求められている。

【註1】IMF(国際通貨基金)世界銀行年次総会:

 IMFと世銀の最高意思決定機関である総務会が毎年秋に合同で開催する会議。総会は3年に1度、IMFと世銀の本部のあるワシントン以外で開催することが慣例となっており、今年は当初、エジプトでの開催が決まっていた。しかし、昨年の「アラブの春」によるムバラク政権崩壊などで開催が不可能になり、代わりに開催地に立候補したのが日本だった。日本での開催は1964(昭和39)年以来2度目だ。

 総会には世界中の財務大臣・中央銀行総裁に代表される通貨・金融当局者だけでなく、金融業界、マスコミなど民間からも多数の人が集まる。IMF、世銀関係の会議のほかに数多くの二国間会談やG7、G20などの大臣会合が開かれる。期間中は大小約200の会議やイベントも開催され、公式参加者が1万人、非公式の参加者を含めれば2万人といわれる世界最大規模の国際会議だ。

※本記事は、「週刊金曜日」(金曜日/913号)に掲載された大塚氏の連載『経済私考』に加筆したものです。

●大塚将司(おおつか・しょうじ)
作家・経済評論家。著書に『流転の果てーニッポン金融盛衰記 85→98』(きんざい)など

BusinessJournal編集部

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