日本から飛行機で約6時間半。赤道直下、オーストラリアの少し北に世界で2番目に大きな島、ニューギニア島がある。その島の東半分と周辺の島々からなる国がパプアニューギニアだ。
この国は、ついこの前まで石器時代だったというのだ!
『世界でいちばん石器時代に近い国 パプアニューギニア』(山口由美/著、幻冬舎/刊)は、“恐怖と笑いが共存する国”パプアニューギニアを紹介する。
パプアニューギニアがこの前まで石器時代だった、とはどういうことなのだろうか?
現地では、近代文明との接触を「ファーストコンタクト」と呼ぶ。それが内陸部の遅いところでは1950年代、60年代だった。ニューギニアは太平洋戦争で多大な犠牲を出した地域でもあるが、沿岸部で戦争があった頃、同じ島の内陸部ではそうした世界情勢とは全く無縁に、何千年前と変わらない「石器時代」が続いていたのだ。
人類が何千年にもわたって積み上げてきたほとんどのことが、彼らにとっては、ほんの親の世代に出会ったこと。今も「黒魔術」が当たり前のように信じられ、生活の中にある。医療や法律のない世界で長く生きてきた人々は、それらの恩恵を得られる今もなお、災いの原因や解決手段を黒魔術に求めてしまうのだ。
ハイランド(高地地方)のゴロカの病院では、診察を受けて病気の原因がよくわからないと「ウィッチドクターに見てもらったらどうか」と真面目に言われるという。ウィッチは日本語で魔女。ウィッチドクターとは、魔術で病気の原因をつきとめたり、治療をしたりする人のことだ。
特に野草を使って治療する場合は、ハーバル(野草)ドクターと呼ぶこともある。ハイランドは魔術が盛んなところだが、ウィッチドクターはパプアニューギニアのいたるところ、首都のポートモレスビーにもいる。もちろん今は具合が悪くなれば、まずは病院に行く人が多い。だが、そこで直らないと、次に頼るのは別の病院や医者ではなくて、ウィッチドクターなのだ。
ピシン語では黒魔術やのろいのことを 「サングーマ」と呼ぶ。ウィッチドクターは、直接的に病気も治すが、それ以上に重要な役割が、病気の原因であるサングーマの正体をつきとめることにあるそうだ。病気やそれに伴う死ばかりでなく、家事や事故などのあらゆる悪い出来事もサングーマに原因があると考える。
そして、サングーマの正体をつきとめることは、サングーマをかけた人物を特定することになる。ウィッチドクターによってサングーマをかけた人が特定された場合、その人物に対する暴力や殺戮には発展することもある。
復讐や呪いなどの呪術が今も存在している一方、お金として貝殻が使われていたり、祖先がカマキリだと信じている村もあるなど、意外な文化もある。世界中のダイバーを引き寄せる魅惑の海もある。日本からパプアニューギニアに行く旅行者の二大勢力といっていいのが、太平洋戦争の慰霊団とダイバーなのだ。太平洋戦争では、ラバウル島には海軍の主要飛行場であり、零戦の基地だった東飛行場があり、ニューギニア本島は激戦地となったという過去があることも忘れてはならない。
恐いところもあれば、笑えるところもある。さまざまな面を持つパプアニューギニアの魅力を知ることができる一冊だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。