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生鮮マグロに広がる寄生虫汚染の実態 全国で食中毒多発、メジマグロは67%が汚染

文=小倉正行/国会議員政策秘書、ライター
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生鮮マグロに広がる寄生虫汚染の実態 全国で食中毒多発、メジマグロは67%が汚染の画像1「Thinkstock」より
 近年、生鮮マグロを食べた人が、食後短時間で下痢や嘔吐など食中毒症状を発症する事例が全国的に広がっている。その原因として疑われているのが、粘液胞子虫(クドア属)である。粘液胞子虫とは寄生虫であるが、顕微鏡でなければ見えない大きさで、肉眼では発見できない。

 このクドアによる食中毒は、2011年6月に厚生労働省によって新型食中毒として扱われることになった。その第一号が、養殖ヒラメのクドア汚染による食中毒であった。これにより、食中毒統計で養殖ヒラメのクドア食中毒実態が明らかになった。同統計によると、11年6月から12月までの6カ月間に、クドア食中毒患者は19都道府県で492人も出たことが判明し、クドアによる食中毒が全国的に広がっていることが明らかになった。

 そして今、生鮮マグロによる食中毒の原因物質として、このクドアが疑われている。東京都健康安全研究センターが11年4月から13年2月の間、マグロ類のクドア寄生実態調査を行った。都内の市場およびスーパーマーケットに流通していたマグロ類を購入して調べたものであるが、その結果は驚くべきものであった。日本産メジマグロの67%、日本産クロマグロの10%がクドアに汚染されていたというものである。特に日本産メジマグロの汚染率は極めて高く、3検体のうち2検体が汚染されているというものであった。他方、ミナミマグロ、キハダマグロ、メバチマグロなどからはクドアは検出されなかった。

メジマグロによるクドア食中毒の実態

 メジマグロの産地別検出状況を見ると、日本海側が74%、太平洋側が48%で日本海側のほうが検出率が高かった。そして東京都の調査では、11年から12年に発生したマグロ食中毒事案の7事例すべてがメジマグロによる食中毒で、そのすべてからクドアが検出されていた。

・11年6月13日:メジマグロ(福岡県産)とヒラメの刺身を食べ、1時間後に嘔吐下痢、メジマグロの残品からクドアが検出。
・11年6月20日:メジマグロ(長崎県産)の刺身を食べ、6時間後に下痢と腹痛、メジマグロの残品からクドアを検出。
・11年7月3日:メジマグロ(福岡県産)の刺身を食べ、3時間後に吐き気、腹痛、嘔吐、下痢、メジマグロの残品からクドアを検出。
・11年12月9日:メジマグロ(長崎県産)の刺身を食べ、3時間半後に下痢、メジマグロの残品からクドアを検出。
・11年12月19日:飲食店での食事(メジマグロの刺身を含む)の1時間半後に下痢、腹痛、嘔吐、発熱、メジマグロの残品からクドアを検出。
・12年6月20日〜21日:飲食店での食事(メジマグロの刺身を含む)の1時間半〜7時間後、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、メジマグロの残品からクドア検出。
・12年8月21日:仕出し弁当(メジマグロの刺身含む)を食べた5時間後に吐き気、嘔吐、下痢、メジマグロの残品からクドア検出。

厚労省は野放し状態

 メジマグロとは、クロマグロの3歳以下の子供を指し、大きさは30kg未満とかなり小ぶりで、脂ののりは少なめであるが、そのぶん安いのが魅力といわれている。また、メジマグロは上品な甘みのあるおいしいマグロとして、年配の消費者に人気ともいわれている。

 現時点では、マグロのクドア汚染は厚生労働省から食中毒扱いを受けていないため、野放し状態で、消費者が自己防衛するしかない。消費者が自己防衛するためには、マグロは冷凍品を食するようにすることである。クドアは、冷凍されると毒性を失うので、冷凍マグロは安全といえる。

 また、メジマグロはクロマグロの子供であり、その乱獲はクロマグロの資源を枯渇させることになるので、資源保護のために捕獲数は年々削減されている。できれば消費者側も、メジマグロの購入を回避するぐらいの消費行動が必要かもしれない。
(文=小倉正行/国会議員政策秘書、ライター)

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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