手数料未納の時点で駐車違反になるということだが、噂については「回答する義務なし」との理由で詳しい話を聞くことはできなかった。しかし、駐車違反に該当することは確かなようだ。
そこで次に、噂の真偽を確かめるべく、放置車両確認事務の業務を委託されるために必要な「駐車監視員資格」を保有し、『なんでこれが交通違反なの!?』(草思社)などの著者である交通ジャーナリストの今井亮一氏に話を聞いた。
「私が行政文書の開示請求によって入手した『駐車監視員マニュアル』には、パーメについてこのような一文があります」(今井氏)
『巡回中、パーキング・メーターが設置されている時間制限駐車区間においてパーキング・メーターを作動させずに駐車している車両(当該区間における制限時間を超過していないものに限る)を認めた場合は、当該車両のフロントガラスのワイパーに警告書を挟み込む等の方法により警告措置を行うものとする』(駐車監視員マニュアル)
「つまり、監視員はパーメ不作動の車両を見つけても取り締まりをせず、加点・罰金なしの警告にとどめよということです。監視員の講習テキスト『駐車監視員資格者必携』(東京法令出版)にも、似たような文言を確認済みです。現在ネット上で拡散されている件は、マニュアルを元に監視員が行動しただけです。ただし、手数料未納車は警視庁交通部が言うように、実際にはパーメ不作動の違反が発生しています。時間超過や枠外駐車と同等に駐車違反になります」(同)
「みなし公務員」である駐車監視員という存在が要因
驚きの真相だが、警察官は取り締まりを行い、駐車監視員はなぜ警告止まりなのか。
「未納問題は悪意があるものばかりではなく、例えば小銭がない場合に両替目的で車から離れることもあるでしょう。そんな隙に監視員に取り締まりをされた運転手は、点数を付けられ経済的にも痛手を負ってしまいますから、機嫌を損ねて最悪の場合、監視員と揉めて事件へと発展してしまう可能性もあるでしょう。つまり、監視員が取り締まりをしないのは、トラブルを避ける特殊ルールではないでしょうか」(同)
また駐車監視員は、業務中のみ公務員扱いを受ける“みなし公務員”のため、悪質ドライバーに足元を見られるケースも少なくない。警察官ならば認められた権限と訓練で鍛えた身体で迅速に対応できるが、主に40代後半から60代で組織された駐車監視員は、トラブルの回避は難しいかもしれない。そんな彼らが無用な火種をつくらないために、手数料未納車両は取り締まらないということが実態のようだ。
「59分までにパーメから車を動かしてタイマーをリセットし、また戻ってきて59分まで駐車するような悪質なケースでも取り締まれないという現状に、ジレンマを抱える監視員たちから警察に制度改正の訴えを出しているとも聞いています。国がルール改正に動く可能性は十分あります」
違法駐車対策強化のために整備された駐車監視員制度は、認定開始から間もなく10年を迎える。法律の網の目をかいくぐる人間はいつの時代でも存在するが、パーキング・メーターにまつわる網目も締め直しが必要な時期かもしれない。
(文=東賢志/A4studio)