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しかも、もともとの適用除外者であった「管理職」には、深夜の割増賃金の支払い義務は残っているのだ。つまり、同じ正社員でも課長だと夜10時以降は残業代が出るのに、高度プロフェッショナル社員には出ないという矛盾が発生する。アメリカのホワイトカラー・エグゼンプションでも、こうした特例は存在しない。エグゼンプションの母国アメリカのオバマ大統領は「何百万人もの残業代や最低賃金の権利が保護されていない」と述べて、14年3月に労働長官に見直しを指示している。近いうちに見直し案が示される予定だ。それに逆行するかのように、日本は労働者に犠牲を強いる法案を成立させようとしている。
●日本中の労働現場で混乱必至
また、企画業務型裁量労働制自体はもともと完全な時間規制を外すエグゼンプションの中間形態として、経済界の要望で実現したものだが、経団連はいずれ裁量労働制をエグゼンプションと統一化しようとしていた(拙著を参照)。そもそもこんな制度が存在するのは世界で日本だけである。にもかかわらず、今回は対象業務が大幅に拡大される。
今後日本の企業には、対象業務の範囲が区別しがたい高度プロフェッショナル社員と企画業務型裁量労働制社員が並立することになる。だが、法制的な位置づけが曖昧な制度であっても、企業にとっては社員を「管理職」にするのか、「高度プロフェッショナル」にするのか、「裁量労働制」にするのか、思いのままにできるメリットがある。
このような抜け道の多い中途半端な状態で導入が進めば、いずれ日本中の労働現場で矛盾が噴き出し、混乱するのは必至だろう。それは取り締まる側の労働基準監督署も同じだ。
そして最も危惧される点は、法令の矛盾に翻弄され、犠牲を強いられるのは常にサラリーマンだということだ。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)
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