今年4月、愛知県名古屋市で県立高校の男性教諭が、携帯電話の出会い系アプリで知り合った女子小学生に淫行しようとして強姦未遂の疑いで逮捕された。同月、大分県では別府警察署の男性巡査が、インターネットで知り合った17歳の男子高校生にわいせつな行為をしたとして懲戒免職になった。
ネットやスマートフォン(スマホ)の普及により、児童が被害者となる犯罪は安易に発生するようになった。興味本位の児童・生徒たちが、出会い系サイトやアプリなどをカタリスト(触媒)として知り合う大人は、安全な人たちだけではない。剣呑な大人もたくさんいるのだ。
警察庁がこのほど発表した「平成26(2014)年中の出会い系サイトおよびコミュニティサイトに起因する事犯」によると、出会い系サイトに起因する犯罪の被害児童は152人と前年より7人減少した。近年で最も被害児童が多かった11年の282人と比較すると100人以上も減少している。
これは、08年に出会い系サイト規制法の法改正を行い、届け出制を導入して事業者の実態把握が促進されたことや、事業者の被害防止措置が義務化されたことなどの成果が表れてきたものといえる。
出会い系サイトの事業者届け出数は、14年は事業者1372(うち法人1193、個人179)で、届け出サイト数は2580(うち法人2281、個人299)となっている。152人の被害児童のうち、最も多かった犯罪は児童買春・児童ポルノ法違反で84人だった。内訳は児童買春が74人、児童ポルノが10人となっている。
コミュニティサイトで低年齢層の被害拡大
一方、コミュニティサイトに起因する犯罪の被害児童は1421人と、前年より128人増加している。これは、13年以降、無料通話アプリのIDを交換する掲示板に起因する犯罪被害などが増加しているためだ。
1421人の被害児童のうち、最も多かった犯罪は青少年保護育成条例違反で711人、次いで児童買春・児童ポルノ法違反の618人だった。内訳は児童買春が260人、児童ポルノが358人となっている。
コミュニティサイトへのアクセス手段としては、携帯電話が89.8%を占めており、そのうちスマホが87.6%となっている。スマホが児童に普及したことが犯罪に巻き込まれる原因になった姿が浮き彫りになっている。
特徴的なのは、コミュニティサイトでの被害者に低年齢層が多いことだろう。出会い系サイトでは、15歳以下の被害者が37%程度なのに対して、コミュニティサイトでは52%程度が15歳以下となっている。さらに、出会い系サイトでは12歳以下はゼロなのに対して、コミュニティサイトでは3.5%も発生している。
被害児童が携帯電話を購入した際には、保護者が一緒に購入しているケースが86.5%に上り、携帯電話の名義も母親38.2%、父親34.4%とおよそ4分の3が両親どちらかの名義で、本人名義は19.1%しかない。未成年者は原則として親の同意がなければ携帯電話の契約ができないため、少なくとも親は子どもが携帯電話を所有することを把握しているはずだ。
つまり、好奇心の強い年齢の児童たちが、こうした出会い系やコミュニティサイトにアクセスする可能性があることは親も推測できたわけであり、十分に危険性を教えることはできたはずだ。しかし、被害に遭った児童のうち、保護者から事前に注意を受けていたのは46.2%であり、半数以上は親から注意を受けていなかった。
児童が被害に遭うのを食い止めるためには、親の指導がまず欠かせない。子どもに携帯電話を持たせる場合には、それを肝に銘じなければならない。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)