派遣労働の期間制限を一部撤廃する「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)」の改正案が、衆議院本会議で審議入りした。現在、一部の専門業務を除いて最長3年までとなっている派遣期間の制限を撤廃する一方、1人の派遣労働者が企業の同じ部署で働ける期間を3年に制限するといった点が主な改正目的だ。
民主党などが、派遣労働の固定化につながるものだと批判したのに対し、安倍晋三首相は、派遣会社が派遣先の企業に正社員への登用を依頼するよう義務づけるなど、派遣労働の固定化を防ぐ措置を盛り込んでいると反論している。労働者派遣法の改正案は、条文のミスと衆議院の解散で2回廃案となっており、政府は3回目の提出となった今国会で確実に成立させたい意向だ。
「週刊朝日」(朝日新聞出版/4月3日号)の記事『「通ったら殺されてしまう」派遣法改悪に派遣OL悲痛な叫び』では、女性派遣労働者の切実な訴えを紹介している。
シングルマザーで2人の子どもを育ててきた宇山さん(50代女性・仮名)は、15年前に派遣会社に登録してから、鉱業関連の企業に派遣されて働き続けている。契約更新は3カ月単位で、業務内容は専門業務の一つとされている「事務用機器操作」だ。ワードやエクセルなどパソコン用ソフトを使って資料を作成するが、海外から来た重要顧客の滞在の世話から、社内の宴会幹事まで担当することもあるという。
宇山さんは、現在の境遇への不安を次のように吐露する。
「『事務用機器操作』といっても、やる仕事は一般職の女性社員と同じ。何でもやらされます。給料は正社員の3分の1ぐらい。退職金もボーナスもありません。50歳を過ぎて転職も難しく、年齢を理由にクビになるまで生殺しです」
「安倍さんは、女性の活躍推進を強調していますけど、あれは正社員で幹部候補のエリート女性だけに向けられたものなんです。私のような派遣労働者には何の関係もない話です」
派遣法に詳しい弁護士は、今回の改正案をこう解説する。
「3年の派遣期間が終了しても、課を異動すれば問題ないということは、企業の人事システムに組み込まれるということ。たとえば人事課で働いた後に総務課に行き、また人事課に戻ってきても合法になる」(同記事より)
3年間働いた人を同じ職場の別の課に異動させるか、他の派遣労働者に入れ替えれば、無期限の派遣労働が合法化される。つまり、労働者派遣法の改正で派遣社員は専門分野の区別なく、待遇は変わらずに働かされ続けることになる。3年ごとに部署異動を繰り返し、待遇に文句でも言おうものなら、そこで「はい、次の派遣社員」とクビにされかねない。