医師が教える、猛暑でもバテない&体が自然と冷える方法リスト…熱中症も防げる!
「熱中症」は、高温多湿の環境に適応できず、「体温が上昇して、体内の水分、塩分のバランスが崩れて起こる症状」である。「頭痛」「頭がぼーっとする」「頭がくらっとする」「立ちくらみ」「めまい」「気持ちが悪い」「だるい」などが初期症状だ。
この初期症状の間に水分補給と、梅干しや塩昆布などによる塩分補給をすぐにする必要がある。血液中の塩分濃度は血液1リットル中に9グラムで、「水1リットル(コップ5杯強)に梅干し2個」くらいが相当する。
初期症状が出たときに放っておくと、さらに体温が上昇して突然、痙攣、手足の運動障害、意識障害が起こることがあるので、意識レベルの低下を示すサイン(呼びかけに対して返事をしない/何を聞いても「うん」「はい」などの生返事しかしない)が表われたら、迷わず救急車を呼ぶべきである。
「熱中症」は「気温30℃」「湿度60%」のうち、いずれかをオーバーすると起こる可能性がある。よって、「気温28℃」でも「湿度62%」なら熱中症になる可能性があるわけだ。しかし、人間は暑さが続いても「暑さに次第に慣れてくる」(暑熱順化)ので、夏の後半にはいくら暑くても熱中症発症のリスクは下がってくる。逆に気温が一気に高くなってくるときが一番リスクが高い。今年の7月は23日頃までは日照時間も過去最少記録を更新し、「冷夏」というか「梅雨寒」が続いた。この後、7月下旬から8月初旬にかけて、急に熱くなるときに「熱中症」のリスクが急増してくる。
2012~2018年(いずれも6~9月)に熱中症で救急搬送された人の数は昨年が一番多く、9万2710人を数える。昨年の「熱中症発症の場所」は、
・住居=40.3%
・道路=13.4%
・屋外=12.8%
・仕事場(道路工事現場、工場、作業所等)=10.8%
と、屋内で半数以上が発症しているのだから驚きである。しかも、28℃前後の室温で発症することも少なくない、という。よって、熱中症対策として、
(1)28℃を超えたらエアコン(クーラー)を使う
(2)首、脇の下、下肢の付け根など太い動脈が表面を流れているところを水や氷につけてしぼったタオルで適宜冷やす
(3)昔から暑さ対策として日本人が食べてきた体を冷やす食べ物である「かき氷」「冷ややっこ」「冷やしソーメン」「スイカ」「キュウリ」「ところてん」などのほか、さらに体を冷やす作用の強い熱帯~亜熱帯産のハッサク、夏ミカン、シークワーサーなどを積極的に食べる
(4)外出するときは(出勤するときは無理だろうが)
・半袖シャツ、半ズボンを着用
・半袖シャツの首丈のボタンを外し、シャツの裾はズボンの外に出す(煙突効果で風通しがよくなる)
などが一般に推奨されている方法だ。
積極的に汗をかく
しかし、根本の熱中症対策は「日頃、汗をかく生活をする」ことである。今から50~60年前の我々の幼少時から少年~青年時代にはエアコンなど存在せず、扇風機のある家は裕福な家庭で、ほとんどの人が「うちわ」で涼をとっていた。夏は室内、室外を問わず30~35℃になるのは日常茶飯事で、湿度は今となんら変わりはしない60~100%であった。
しかし、炎天下で労働や運動をして起こる「日射病」はあっても、室内で発症する「熱中症」などというのは聞いたこともなかったし、目の当たりにしたこともなかった。その頃の日本人は皆、「暑さには強かった」のだ。
なぜか。暑いときは毎日だらだらと汗を流していたから。汗をかくとそれが蒸発するときに気化熱が必要で、体表から熱を奪って、汗という水分が気化していく。つまり体が冷える。この発汗で体温調整をして暑さをしのいでいたわけだ。今や家やオフィスの中、車や電車の中、ありとあらゆる場所でクーラーが効いており、快適である半面、汗をかく機会がはなはだしく減っている現代日本人。それは暑いときに体温を下げる機能が低下しているということでもある。よって「気温28℃」「湿度62%」でも熱中症を起こす脆弱な体に成り下がったのである。
本当の熱中症対策は、最低1日1、2回は汗をかく時間をつくることだ。
(1)シャワーだけではなく、湯船にゆっくり入る。
(2)特に全身浴後、湯船に小さい桶か、逆さまにした洗面器をおいて腰かけて10~20分過ごすという「半身浴」をやる。汗が噴き出してくる。
(3)インド人が暑いゆえに食習慣の中に取り入れている、食べる端から汗が出てくる「カレー」を積極的に食べる。うなぎに山椒を存分にかけるなど、発汗作用の強力な「香辛料」を多用する
などを試みられるとよい。