「老後破綻」「老後は1億円必要」という煽りのまやかし それほど心配は不要なワケ
なぜ老後不安が起きるのか?
最近は雑誌やテレビの番組などで「老後不安」を取り上げられることが多くなってきました。メディアには暗く不安に苛まれるような文字が躍っています。「老後貧乏」「老後難民」「下流老人」そして「老後破綻」といった刺激的な四字熟語が、とても多く目につくようになりました。
こうした背景には、年金に対する不安や不信があると思われます。もちろん公的年金制度がなんの問題もなく万全だとは思いませんし、人生においては想定していなかったさまざまな不幸な事態が重なった結果、厳しい老後生活を余儀なくされている方がいらっしゃることも事実です。
ただ、世の中の大部分の人がそうなるということではありませんし、公的年金は巷間でいわれているほどひどい状態ではありません。マスメディアに出てくる報道やこうした不幸な例は、あたかもすべての人がそういう目に遭ってしまうかのような印象を与えます。
人間というのは目につきやすいことや象徴的なことは自分にも起きるのではないかという心理になりがちなので、どうしてもそういった不安に陥りやすくなります。また金融機関なども不安を煽ることで自社の金融商品へ誘導しようとしているのは明らかでしょう。
「老後には1億円必要」とか「退職時には少なくとも3000~4000万円は用意しておかなければ」といった文言を目にすると普通の人は驚き、焦るに違いありません。私自身が金融機関で営業をやっていた30年前も今とまったく同じことを言って不安を煽り、保険や投資信託を売る営業が行われていました。
実際の老後生活を知らない人たちが老後不安を煽る
しかし、世の中でそういう不安を煽っている人たちのほとんどは、実際に退職後の生活の経験がない人ばかりのようです。私自身、退職して年金生活をしていますが、私は退職後にどれぐらい生活費がかかるかを実際に知りたくて退職前から自分で家計簿をつけてみました。退職時点で住宅ローンも終わり、子供も独立していましたから、夫婦2人だけの生活であれば、退職後はだいたい月に20~25万円前後の生活費でまかなえます。
よく「老後に1億円必要」といわれますが、その根拠は「ゆとりある生活をおくるために必要な生活費は月額35万円」ということからきているようです。ところが前述のように、私自身が3年前から年金生活をするようになった実感からいうと、それほど必要とは思えません。計算の仕方にもよりますが、仮に私のように老後の生活費が20~25万円ぐらいでできるのなら、恐らく老後生活に必要な生涯金額は6000~8000万円ぐらいです。