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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

「老後破綻」「老後は1億円必要」という煽りのまやかし それほど心配は不要なワケ

文=大江英樹/株式会社オフィス・リベルタス代表

 もちろん、お金のかかる趣味をたくさん楽しみたければそれなりに準備しておくことが必要ですが、それほどお金を使わず、月15万円程度で楽しく生活している夫婦だって決して少なくありません。要はライフスタイルの問題なのです。

なぜ、サラリーマンは老後破綻しないのか?

 サラリーマンというのは、自営業者と違って公的年金には強制的に加入させられています。したがって、学校を卒業して以来ずっとサラリーマンをやっていた人であれば生涯に受け取る公的年金の金額は5000~6000万円ぐらいはありますし、もしこれに退職金や企業年金が加わるのであれば、老後の生活費のかなりの部分はカバーされます。

 このようにサラリーマンの場合は、自営業者よりも公的年金の金額は多いのが普通ですし、企業によっては退職金や企業年金だってあります。普通に生活していれば、そうそう老後破綻するようなことはないのです。

 ただ、これは定年時に住宅ローンや教育費の負担がなくなっているということが前提です。したがって最近のように晩婚化が進むと、定年時にこの2つの大きな負担を残さないようにすることが大切です。ローンであれば可能な限り返済を早めておくことや、教育費が退職後に発生するのであれば、別途準備しておくことが必要です。

 また、ずっとサラリーマンで厚生年金に加入している人はともかく、昨今のように非正規で働く人が増えてきた現状においては、必ずしもそういう人たちの老後は安泰というわけではないというのもその通りです。ただ、この問題は老後不安の問題というよりも現在進行形で起きていることであり、社会構造の問題として考えていかなければならないことです。今の時点でサラリーマンとして働いている大部分の人にとっては、過剰な不安を抱く必要はないといってもいいでしょう。

 老後に対して自助努力で備えておくことは大切なことですが、「老後破綻」というショッキングな言葉に煽られて焦って投資にお金を一挙につぎ込むことは避けたほうがいいと思います。自分がどんな生活をしたいか、それにはどれぐらいお金がかかるか。そして公的年金や退職金でその内どれぐらいまかなえるのかをじっくりと計算してみてから、少しずつ始めたほうがいいのではないでしょうか。
(文=大江英樹/株式会社オフィス・リベルタス代表)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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