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榊淳司「不動産を疑え!」

マンション購入の「最悪の結果」…管理組合で修繕積立金の不正横行、無駄&法外な工事

文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト
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丸投げの代償

 しかし、なぜこんなずさんな手口の横領が行われてしまったのか。

 1戸あたり200万円強の規模である。今後、このマンションが大規模修繕を行うためには、戸あたり200万円程度の一時金を負担しなければならないはずだ。ただでさえ資産価値が低下している南魚沼エリアのマンションとしては、戸当たり200万円の一時金負担というのは、かなり非現実的だ。

 管理組合という組織は、小さな自治体みたいなものである。区分所有法によると、管理組合は1年に1回の総会を開くことになっている。これは選挙のようなもの。理事以外の区分所有者が管理組合の活動に関わり、チェックできる貴重な機会だ。

 そこでの主な議案は、前年度の決算と本年度予算の承認である。その他、規約の改正や共用部分の使用細則変更なども議案になりやすい。議案書は理事会が作成することになっているが、実務はほとんど管理会社に任せるのが普通。多くの区分所有者は、自分のマンションの管理組合が出してくる総会の議案書をろくに読まない。それどころか、総会にも参加せず委任状も出さない。

 総会の議事が有効となる定足数は、区分所有法第39条で過半数と定められている。だから、全区分所有者の半数以上が総会に出席するか委任状もしくは議決権行使書を提出してもらうために、多くの管理組合の理事たちや管理会社が苦労している。

 管理組合の理事というのは、自治体でいえば議員のような存在である。そのマンションに関するさまざまな問題を話し合って対処法を決める。事実上、その管理組合が集めた管理費や修繕維持積立金をどのように使うかを決めることができる。本年度の予算案の作成作業がこれに当たる。

利権の構図

 自治体においても、予算をどう使うかは最重要な政策課題である。市民の監視が緩いと、役人が勝手にヤミ手当を支給したり、業者と癒着して「税金の無駄遣い」や「横領」が起こる。これは、マンションの管理組合でも同じ。

 大規模マンションの広いエントランスホールに置かれていたいくつもの植栽の設置や管理が、すべてある理事が経営する企業に発注されていたり、修繕工事を理事長の関係する建築会社に請け負わせるなどというケースはよくある。また、元は無償だった理事や理事長の報酬を、いつの間にか規約改正して1人当たり年間数十万円も支払うことにした管理組合もある。お金が集まるところには、利権が生まれるのである。

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト

不動産ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰。1962年京都市生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。主に首都圏のマンション市場に関する様々な分析や情報を発信。
東京23内、川崎市、大阪市等の新築マンションの資産価値評価を有料レポートとしてエンドユーザー向けに提供。
2013年4月より夕刊フジにコラム「マンション業界の秘密」を掲載中。その他経済誌、週刊誌、新聞等にマンション市場に関するコメント掲載多数。
主な著書に「2025年東京不動産大暴落(イースト新書)※現在8刷」、「マンション格差(講談社現代新書)※現在5刷」、「マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)※増刷」等。
「たけしのテレビタックル」「羽鳥慎一モーニングショー」などテレビ、ラジオの出演多数。早稲田大学オープンカレッジ講師。
榊淳司オフィシャルサイト

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