黒田東彦氏が日本銀行の総裁に就任してから3年超が経過した。黒田日銀が行った「異次元」ともいえる金融緩和は、2016年に入ってとうとう史上初のマイナス金利にまで至った。そもそも、この異次元金融緩和の目的はなんだったのか。筆者は大きく3つあったと考えている。
まず、何よりも景気対策。市場におカネをたくさん供給することで経済を活性化させるはずだった。では、実際にそうなったのか――。
GDPでみると、13年こそ前年比1.59%伸びたが、14年は消費増税の反動もあってマイナス、15年は0.59%の伸びでしかない。異次元と呼ばれるほどおカネを増やしたのに、実態経済はほとんど成長していない。
2番目は、円安誘導。これは1ドル80円程度だったのが120円超まで導かれる効果があった。しかし、さらなる円安を目指したと思われるマイナス金利では、逆効果としか思えない結果が出ている。また、2月末に開催されたG20では「通貨安競争は避けるべき」とくぎを刺されている。
3番目は、2%のインフレ目標。これに関しては、まったく効果なし。次々と達成目標期限を先送りしているだけ。現実には、むしろデフレ傾向が戻りつつあるように思える。
つまり、日銀の金融緩和の目的は、「異次元」な水準であるにもかかわらず、並以下の結果しか導いていない。
局地バブル
その一方で、大きな副産物を残している。それはマンション市場の「局地バブル」だ。「局地」と呼ぶのは、地域が限定されているからだ。バブル化しているのは、東京の都心、城南、湾岸エリア。神奈川県の武蔵小杉、みなとみらいエリア、京都市の御所周辺エリアなど。このほか、仙台市や福岡市などでもマンション価格が高騰しているケースが見られるが、そこには実際の需要が伴っているので、バブルというよりも普通の値上がりの範囲内だと考える。
新築マンション市場は、そもそもアベノミクスが始まった13年初頭から好調期に入っていた。異次元の金融緩和によって金利が低下し、住宅ローンも通りやすくなっていた。筆者はこれを、異次元金融緩和(第1弾)による「ミニミニバブル」であると考え、そのように情報発信していた。
ところが、14年4月の消費増税によって市場は一気に冷え込んだ。同年の秋口には市場の不調が可視化していたので、筆者はいろいろなメディアに「ミニミニバブルは終わった」と書いた。