そして14年10月31日、日銀は異次元金融緩和の第2弾を発表する。いわゆる「黒田バズーカ2」と呼ばれるものだ。これによって、局地エリアでのマンションを含む不動産市場全般において、萎みかけていたミニミニバブルが一気に息を吹き返したばかりか、さらなるパワーで膨張し始めたのだ。
14年の終わりから15年の秋にかけての局地エリア不動産市場は、かつての平成バブルを思わせる様相を見せていた。不動産の仲介業者たちはどんどん物件を買い入れ、それを高値で別の業者に転売した。銀行融資は超が付くほどの緩和状態。
そして、15年における不動産業向けの新規貸し出し総額はついに10兆円を超えた。これは、あの平成バブル期よりも大きな規模だ。平成バブルが弾けた時、多くの融資は「不良債権」になった。その結果、不動産業者だけでなく多くの金融機関が倒産したことを思い出してほしい。
今の日本の不動産市場には、日銀の異次元金融緩和によって「失われた20年」をもたらした平成バブルの時よりも、マグマが溜まっているのだ。
潮目は変わろうとしている
16年に入って、その局地バブルの様相にやや変化が見られる。さまざまな現象が出てきているのだ。
イケイケドンドンだった不動産業者たちは、慎重になりだした。中古マンションの売り出し物件が増えてきた。湾岸エリアでは多くの外国人が、新築で購入したマンションを売り出している、という話も聞く。東京ではバブル化していた城南エリアの新築マンション市場でも、勢いの衰えが目立つ。また、販売業者が強気一辺倒だった都心エリアの新築マンション市場では、値引き販売が多くなってきた。潮目は変わろうとしているのだ。
バブルというものは、基本的に不健全な経済現象だ。ほんの少しの人々に短期間だけいい思いをさせるだけで、崩壊後は多くの人を長く苦しませる。崩壊するなら、早いに越したことはない。すでに今は「崩壊の始まり」かもしれない。
しかし、心配な面もある。ほかならぬ黒田総裁である。現状の金融政策での効果が乏しいと考えて「バズーカ4」を撃ち放つ可能性も否定できない。中身はマイナス金利の拡大。すでに住宅ローンがマイナス金利となっているデンマークでは、全国的に不動産価格が上昇しているという。当たり前だ、「お金を借りて利子が貰える」となれば、一見何の損もない。多くの人が住宅ローンを組んで住宅を買う。