お金や保険の記事&専門家の話、なぜ信じてはいけない?自分には「よくない」ことも
結局、必要な保障期間の保険料支払い総額を計算して比較すると、たばこを吸わない人であれば、保険料が安い保険会社を選んで「収入保障保険」に加入するほうが、団体定期保険を減額していくより保険料が少なくなるのが普通なのだ。
そのまま実行しない方がよい3つの理由
なぜ、マネー記事やコラムの内容はそのまま実行しないほうがよい場合が多いのか、その理由は主に次の3つを挙げることができる。
1.メリットが全員には当てはまらない
有利に見える方法や商品にもデメリットはあり、全員にとってよいものはほとんどない。何割かの人は、別の選択肢のほうがよい場合もあるのが普通だ。
2.実際の商品が理屈通りになっていない
たとえば、商品の価格は原価に適正な利益を上乗せして決めるという単純なものではなく、競合状況や販売戦略などさまざまな要素が影響するため、理屈どおりの価格でないこともある。筋が通っているように思える商品選択の考え方も、実際の商品で考えると、当てはまらないことも意外に多いのだ。
3.全体で見ると最適ではない
一括りにマネーの話といっても幅広く、資産運用、生命保険、住宅ローンなど、それぞれの分野で細分化された専門家がいる。ある分野の専門家は当然、その分野での最適を考えて記事を書く。ところが、部分での最適と全体での最適は必ずしもイコールではない。ライフプラン全体を考えると、むしろよくないということが結構あるのだ。
この理由からわかるように、不特定多数が対象になるメディアでは、読む人のほとんどに当てはまる内容を書くことは困難である。記事やコラムを書くとき、私自身も「評論家」になっていないかを繰り返し考えるのであるが、正直なところ、完全に逃れることはできていないだろう。マネー記事やコラムから考え方や知識を得るのは有効であるが、自分に当てはめてよいかどうかは別問題であることを、ぜひ覚えておいてほしい。
この連載では、方法や商品について書くとき、メリットとデメリットの両面や、どんな人に向いてどんな人に向かないのかを、「実務家としての視点」からできる限り明確にしていきたい。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)