「これからの時代、どこでマンションを買えばいいのですか?」
よく、こういった質問を受ける。実に漠然とした質問なので、答えにくい。また、マンションを購入する目的がどこにあるかによっても、答えが変わってくる。「ずっと住み続ける」というのなら、自分が住みたい街や路線を選べばいい。しかし、「いつか売る」あるいは「賃貸に回すかもしれない」という想定でマンションを買うのなら、やはり「売りやすい」、あるいは「貸しやすい」場所を選ぶに越したことはない。
今回は後者の場合について、ひとつの指針を示しておく。
まず、路線について考えてみよう。中古マンションとして売却しやすく、資産価値が高く評価される路線とはどういった特徴があるのか。
高度成長期やそれに続く安定成長期のように人口が増えて都市が膨張していた時代は、「人気」というキーワードが最重視された。「住みたい街ランキング」や「住んでみたい沿線」といった、人々の人気度がそのまま資産価値や売却のしやすさに直結していたのだ。
しかし、これから日本では大都市もいよいよ衰退期に入る。住民が減って街がダウンサイズ化していくのだ。これは日本の近代史上では初めての経験である。この未知なる社会変動が起きている時代に、「人気」という曖昧なイメージだけで街の将来を見通すことはできない。経済的な根拠のある法則性を見いだす必要がある。
都市間の連結性
私の考えている、これからの時代の路線選びは「都市間の連結性」である。つまり「その路線の先に有力都市が連なっているか」という視点だ。
ズバリ言おう。この視点で選ぶと、日本でもっともマンションの資産価値が落ちにくいのは、JR東海道本線の沿線である。
理由は簡単だ。この沿線には日本の代表的な都市のほとんどが入っているから。東京から品川、川崎、横浜を経て、その先には名古屋や京都、大阪がある。さらに山陽本線に連結して神戸から広島、そして福岡へと結ばれている。こういった有力都市をつないでいる路線の沿線は、資産価値が極めて安定しているのだ。
東海道線沿線の資産価値が安定していることを示す現象のひとつとして、神奈川県藤沢市の発展をあげることができる。首都圏でも遠隔郊外都市の人口減少が定着するなか、藤沢市の人口は増え続け、街には発展の様子が見られる。東京方面からの流入が多いのだろう。同じ湘南エリアでも東海道線から外れた逗子市などでは人口が減少傾向にある。発展中の藤沢市とは対照的な現象だと捉えることができる。