いまひとつのリスクが、5年後の返済額増額です。変動金利型では5年に1度返済額を見直すことになっています。やはり借入額3000万円、金利0.625%の35年返済で、便宜的に5年間は金利が変わらず、6年目に入るときに金利が1%上がって1.625%になったとすれば、6年目からの返済額は9万1668円に増えます。
それまでの7万9544円に対して、15.2%の増額です。さらに、2%上がって2.625%になると計算上の返済額は10万9852円です。ただし、変動金利型には5年後に返済額が増える場合には増額率を25%までに抑えるというルールがあるので、7万9544円×1.25で9万9430円が上限です。この場合も、不足分は元金と利息で調整し、元金の減り方が遅くなります。
過去には2年間で金利が3%上がったことも
そう指摘すると、「そんなに急激に金利が上がるはずはない」という声が聞こえてきそうです。確かに現在のように、世界的な景気停滞感が強い上に英国のEU離脱といった波瀾要因が重なっているなかでは、しばらくは急激な景気回復は望めず、金利の上昇もないかもしれません。
しかし、住宅ローンは20年、30年と返済が続きます。長い目でみれば、金利の上昇がないとはいえません。いや、むしろかつてない超低金利だからこそ、上がるときには急激な上がり方になる可能性がないでしょうか。過去には2年間で住宅ローン金利が3%以上上がったこともあります。絶対にないとはいえないでしょう。
にもかかわらず、多くの人が変動金利型を利用しています。これは、昨年11月から今年2月の調査ですが、図表2にあるように4割近い人が変動金利型を利用しているのです。この調査の後、マイナス金利の導入で3月以降急速に金利が低下して、住宅ローン金利についても先高感がなくなり、いっそう変動金利型を利用する人が増えているのではないかとみられます。
変動金利型のリスクを理解していない人が多い
しかも、先に触れた変動金利型のリスクを十分に理解しないままに、利用している人が少なくありません。図表3にあるように、借入後の金利上昇による返済額増額への対応について、「理解しているか不安」「よく理解していない」「まったく理解していない」とする人の合計は5割近くに達します。