配偶者控除廃止の目的は6000億円の増税だった!自民党、育児も介護も家庭に押し付ける憲法提唱
配偶者控除より高い「106万円の壁」
そもそも、安倍晋三政権が言う「配偶者控除が女性の社会進出を阻害する」は、配偶者控除廃止で約6000億円(財務省の試算)の増税をするために、取ってつけた理由です。
配偶者控除の廃止については、小泉純一郎内閣では「社会保障の充実」という理由で、小沢一郎氏が代表だった旧民主党では「格差の是正」、鳩山由紀夫内閣は「控除から手当へ」……。その都度、理由はコロコロと変わるのですが、廃止することだけは一貫しています。なぜそうなるのかといえば、財務省の目的は控除廃止による6000億円の増税にあるからです。
その証拠に、「女性にもっと働いてもらうために、配偶者控除の103万円の年収上限を150万円まで引き上げたらどうか」という案が与党内で出たとたんに、財務省が有力議員に「それはやめてくれ」と必死で「ご説明」に回りました。
また、配偶者控除の代わりということで出てきた「夫婦控除」という案も、せっかくの増税分が減ってしまうということで立ち消えになってしまいました。百歩譲って6000億円の増税になったとして、「それが私たちの生活に有意義に使われるのならいい」と思う人もいるかもしれません。
実は、04年、配偶者控除に上乗せされていた配偶者特別控除が廃止されました。これによって約7000億円の増税になり、増税分は社会保障のために使われるということでした。けれど、そのほとんどは社会保障には使われずに、国の借金の穴埋めに使われました。
とんでもないのは、103万円の壁を廃止しようというのに、わざわざその先に「106万円の壁」(16年10月以降、一定の条件を満たした場合に年収106万円以上で社会保険に加入する制度)をつくったこと。実は、この106万円の壁は、配偶者控除とはくらべものにならないほど大きな壁で、これこそが女性の働き方を阻害する要因になりかねないものです。
106万円の壁の問題については、次回に詳しく書きましょう。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)
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