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ホステスが受け取るお金は「給与」か「報酬」か…クラブへの税務調査で大どんでん返し

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きなホステスは「新人」です。

 今回は、クラブなどがホステスに支払うお金が「給与」か「外注費」かについてみていきます。一般的には「外注費」、ホステスからすると「報酬」という認識が根強いと思います。

「ホステス 税金」でグーグル検索すると、2番目に国税庁ホームページ「No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金」が出てきます。そこにはこうあります(一部略)。

「ホステスに報酬を支払うときは、所得税を源泉徴収しなければなりません。
 ただし、給与に該当する場合には、給与として源泉徴収すべき所得税を計算します。
 ホステスに支払う報酬とは、次に該当する場合をいいます。
(1)バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスに報酬を支払う場合」

 基本的には、「ホステスへの支払いは報酬である」と認識しうる書き方です。しかし、すべての場合で報酬となるわけではありません。

 ここで知っておいていただきたいのは、ホステスを雇う側にとっては、同じお金を払うのなら「給与」より「報酬」が有利だということです。理由はここでは割愛しますが、雇う側は「報酬」とされる「外注費」で会計処理をしたいと考えています。

ホステスへの支払いは給与か?

 あるキャバクラに税務調査があったときのことです。当然のように、ホステスへの支払いを報酬として計上していましたが、「給与ですよ」と言われてしまいました。

 事実関係を確認すると、ホステスの採用は店長が行っていて、応募者と面接し、給与体系、勤務時間、規則などの勤務条件を説明して、合意した女性に働いてもらっていました。給与と報酬のどちらになるかは、おおむね「空間的拘束」と「時間的拘束」があるかで判断されますが、これはホステスの契約条件や働き方を見て、個別に判断する必要があります。

 ホステスは、店長に出勤予定表を提出していて、欠勤する場合には事前に申し出をして、遅刻や無断欠勤には罰金が課されていました。これは、テレビなどで見聞きするホステスの一般的な働き方に思えます。また、店長はタイムカードでホステスの出退勤を管理していました。ホステスの出勤時間をタイムカードで管理するのが一般的かどうかはわかりませんが、どうやら会社員に近い勤務形態のようです。

 店からホステスへの支払いは、客からの指名実績に応じて算出される時間給に勤務時間をかけ、手当や罰金が勘案されて行われていました。ただし、採用後1カ月は指名本数が少ない場合でも一定額の時間給が保証され、その後は指名の実績により変動されるシステムです。

 また、このお店ではツケ払いができたようです。ホストの金銭事情を紹介するテレビ番組では、ツケが回収できなければホストの負担となる旨が紹介されるのを見たことがあります。しかし、この店では売掛金の回収は店長が行い、未回収分があってもホステスはその責任を負わないこととされていました。

 事実関係から判断すると、ホステスは空間的・時間的拘束を受けて労務を提供し、基本的に時間給でお金を支給されており、これは給与といえます。

 売上により支払いが上乗せされることはありますが、貢献度により給与が異なることは、一般の会社にも見受けられ、客からの指名本数や飲食数に応じて変動したとしても報酬に当たるとはいえません。

 また、売掛金に対する責任を負っていなかったことから、自己の計算と危険において独立して経済活動を営んでいたとはいえないでしょう。報酬をもらえば、ほとんどの場合、事業所得として申告されます。事業所得とするためには、自己の計算と危険において独立して営まれる業務である必要があります。

 また、ホステスが客の情報を個人で管理し、客からの車代やプレゼントに店は関与していないので報酬に当たるとの主張もありましたが、それだけでは上記判断を覆すことはできなかったようです。

 給与に該当すれば経費は認められません。眼前のホステスが、「なんでもかんでも経費にしているわ」などと言っていても、そもそも経費が認められない所得区分かもしれず、税務調査があれば、すべて否認されてしまいます。「無知は危険を招く餌である」。そんな言葉を思い出した事案でした。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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