お笑い芸人の粗品くん(霜降り明星)が、ギャンブルで得た配当を寄付したことが、たびたび話題になっています。11月28日にも、競艇で100万円かけて352万円の払い戻しを受け、250万円を寄付したと明かしています。実際に昭和の芸人さんがそのような行為をしていたかはわかりませんが、「昭和の芸人さんのようだ」と、芸人たちも話題にしています。
さて、ギャンブルで得た利益に対して、税金はかかるのでしょうか。数年前にはハズレ馬券が経費になるか否かが訴訟となり、裁判所の判断が税の取り扱いに大きな影響を与えたこともありました。
年間トータルで負けていても税金は納めなければいけない
みなさんが会社に勤めて給与としてもらったお金は、10種類ある所得のうちの「給与所得」と呼ばれるものに該当します。ほかにも、個人事業者の事業所得や株式などを売買したときの「譲渡所得」などがありますが、ギャンブルで得た利益は概ね「一時所得」に該当します。
一時所得に該当すると、年間の利益から年間の損失を引いて、その差額に所得税率を掛けるような計算方法を用いることができません。損失として認められるのは、その当たり馬券で得た利益にかかった費用のみになります。よって、見事的中して300万円の配当があった場合、その購入代金などは300万円から引くことができますが、前日までに500万円負けていても、差し引くことができません。
この考え方は、競馬に限らず、ほかのギャンブルでも同様です。ただし、一時所得は年間50万円までの控除があるので、その範囲であれば税金はかかりませんし、確定申告も不要となります。
外れ馬券が経費になるのか
外れ馬券訴訟の報道をチェックされていた方は、ギャンブルで得た利益が「雑所得」になり、1年間の利益の合計から1年間の損失の合計を引いた残りに税金がかかるという認識があるかもしれません。
ぼくが把握しているだけで2名の方が勝訴しましたが、その環境は特別なものでした。
例えば、競馬で30億円の利益があったけれど、28億円分の馬券を買っていて、手元には2億円しかない。しかし、税務調査によって、30億円すべてに税金をかけると言われてしまったような事案でした。
30億円に対する所得税が仮に15億円程度として、払えるわけがありません。当然、裁判となり納税者側が勝ち、税の取扱いが一部変更され、馬券購入の期間・回数・頻度・期間等の事情を総合考慮して、一時所得か雑所得か判断することになったのです。
具体的には、馬券を自動的に購入するソフトを使い、偶然性の影響を減殺するために年間を通じてほぼすべてのレースで馬券を購入するなど、年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら多数の馬券を購入し続けることにより、回収率が100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合は、雑所得に該当します。
つまり、本気でやっていて、絶対に損をしないような買い方をしていないと雑所得として認めてもらえません。よって、一般の競馬愛好家は、従来どおり一時所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費とならないのです。
寄付した場合、税金は控除されるのか
粗品くんは公益財団法人日本財団に、ギャンブルで得た収益を寄付したようです。
個人が公益社団法人に対する寄附金については、寄附金控除の適用を受けることができます。所得金額の40%を限度として所得や所得税から控除することができますが、確定申告が必要です。
なお、所得から引くことを所得控除、所得税から引くことを税額控除といい、その個人の状況によって有利なほうを判断し、選択することができるようになっています。
寄付金控除は、どこに寄付しても同じように受けられるわけではありません。国や地方公共団体、政党など、限定されていますのでご注意ください。