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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

新築住宅、過去4年で1割値上がり…環境性能等の次は空気性能でさらに値上がり

文=山下和之/住宅ジャーナリスト

食べ物や水と同様に室内の空気も選ぶ時代に

 その空気性能の向上に取り組む住宅メーカーが増えています。たとえば、積水ハウスは千葉大学との共同研究を推進、千葉大学の柏の葉キャンパスに実証実験棟を建設し、空気の質や室内環境が人に与える影響を調査しています。

 通常の在来工法の木造住宅と、化学物質を極力排除し室内の空気環境に最大限配慮した住宅を建てて、モニターに両者にそれぞれ90分間滞在してもらい、その影響がどう出るのかを調査しています。写真にあるようにパソコンなどを使って暗記能力、計算能力などにどんな影響が出てくるのかなどさまざまな反応を測定します。結果、室内空気環境が優れた住宅ほど、身体と心の健康が増進されることを実証したいというのが狙いで、その成果を商品に活かし、他社との差別化要因にしようというわけです。

 この積水ハウスと千葉大学の共同研究は07年から始まっており、今年で10年目を迎えます。積水ハウスでは、その成果として空気環境配慮仕様の「エアキス」を発表、販売に当たっては「食べ物や水と同様に、空気も選んでください」と提唱しています。

新築住宅、過去4年で1割値上がり…環境性能等の次は空気性能でさらに値上がりの画像2室内環境づくりのための実験住宅
新築住宅、過去4年で1割値上がり…環境性能等の次は空気性能でさらに値上がりの画像3実験住宅内での暗記や計算能力実験

実証実験からコンサルティングシステム構築

 こうした室内環境が人の身体や心に及ぼす影響については、客観的なデータが乏しく、あってもモニター数が20人、30人など客観性に乏しいものがほとんどだそうです。
 
 そんななか、千葉大学と積水ハウスでは、数百人規模のデータ収集を目指しています。その結果、「エアキス」の健康増進効果を明確にし、シックハウス発生のメカニズムを解明すると同時に住まいの心地よさなどの心理的な健康増進も模索、それらをコンサルティングシステムに構築、販売に活かしていきたいとしています。

 こうした動きは積水ハウスだけではありません。各社とも環境性能の向上のために住まいの高断熱・高気密化を推進しており、そのなかで、室内空気の質の向上を目指すケースが増えているのです。

 なかでも、注目されるのが、三菱地所ホームが開発した全館空調システムの「エアロテック」でしょう。

既存住宅でも設置可能な空気性能の改善

 これは、住まいの高断熱・高気密化を徹底して、1台の室内機によって、365日・24時間住まいのなかを換気しながら快適な温度で満たそうとする全館空調システムです。

 目玉は、住まいのなかの温度を常に一定に保つことによって快適に暮らし、またヒートショックなどの家庭内事故をなくすという点にあります。しかし、それと同時に、外気を取り入れる際には、花粉やカビなどの胞子を97%カットし、デザイナーが室内の空気の流れまでデザインするので、心地の良い空間になると同時に、身体や心の健康を増進する効果が期待できます。

 このエアロテック、もともとは新築一戸建て用に開発されましたが、最近では三菱地所グループの新築マンションへの導入も進み、さらに、既存住宅、つまり中古マンションなどへの導入も可能になっています。

 図表3にあるように、この中古マンション用の「新マンションエアロテック」を導入すれば、年間の光熱費のランニングコストが大幅に削減できるだけではなく、「空気のキレイさ」が向上するメリットがあります。

新築住宅、過去4年で1割値上がり…環境性能等の次は空気性能でさらに値上がりの画像4

これからの住まい選びの新たな視点

 住まい選びに当たっては、耐震性能や環境性能が優先される傾向が強いのですが、いまや地震に強く、環境にやさしい住まいづくり、住まい選びはごく当たり前のことになりつつあります。

 これからはさらに一歩進めて、住まいのなかの空気環境という「空気性能」をクローズアップする時代になっていきます。空気性能に優れた住まいこそが、そこに住む人の身体と心の健康を増進し、快適で健康な生活を送ることができる――そんなコンセンサスが形成される日もそう遠くはないでしょう。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

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