耐震性能や環境性能に優れた大手の住宅なら、多少高くても仕方がないという考え方がユーザーの間に定着しているのかもしれません。それが、大手住宅メーカーの1棟単価の引き上げを可能にしているのでしょう。
中堅以下も大手並みの耐震性能、環境性能に
しかし、最近では各社とも耐震性能や環境性能の向上に力を入れているため、それによる他社との差別化を図りにくくなっています。
図表1をご覧ください。これは、主に大手住宅メーカーで注文住宅を建てた人のうち、住宅性能表示制度を利用した人の取得等級の割合をグラフ化したものです。
たとえば、耐震性能については、等級1から3まであり、等級3が最高等級ですが、全体のうち91.3%がその等級3を取得しています。また、環境性能の指標である断熱等性能等級でも、64.1%が最高等級の等級4を取得しているのです。環境性能では、まだ最高等級を取得しにくいメーカーもあるようですが、全般的にはほとんどのメーカーが最高等級取得に動いています。
それも、最近では大手メーカーだけではなく、中堅以下のメーカーでもこの住宅性能表示制度への対応を急ぎ、最高等級を取得できるようになりつつあります。
新たな差別化要因が必要になっている
つまり、耐震性能、環境性能ではもはや他社との差別化は難しくなっているわけで、新たな差別化要素が求められているといっていいでしょう。
そのなかで、注目度が高まっているのが、「空気性能」です。つまり、住宅内の空気環境を良くして、住む人の身体の健康、心の健康を促進しようとする考え方です。
田辺新一氏の『室内化学汚染』(講談社新書)によれば、人が一生涯に取り込む物質の重量比をみると、「室内空気」が57%と圧倒的な比重を占めているそうです。食べ物でも、飲み物でもなく、住宅内の空気を最も多く取り込んでいるわけです。睡眠時間を含めて住宅内の滞在時間が最も長い人が大半でしょうから、これは当然の結果でしょう。
しかも、小さな子どもたちにとっては、特にこの室内空気の影響が大きくなります。身体の小さな子どもたちには、室内空気による負荷が大人の2倍かかってしまうからです。その室内空気の善し悪しによって健康が左右され、子どもの頃の室内空気環境の善し悪しが、一生涯影響してくるともいわれています。