あなたの老後資金不足を招く「意外な」毎月の支出とは? 便利で節約のはずが逆効果
私は有料相談専門のファイナンシャルプランナーとして、年間300件ほどの家計相談を受けており、毎日のように「キャッシュフロー表」を相談者のために作成している。「キャッシュフロー表」とは自身と家族の将来のライフイベントや家計の収支、貯蓄残高等を一覧表にしたものである。
キャッシュフロー表を作成すると、さまざまな仮定の上ではあるが、数十年先の貯蓄残高を予測することができる。老後は貯蓄を切り崩していく世帯がほとんどだが、少なくとも妻95歳まで貯蓄がある程度残っていないと問題ありと私はアドバイスしている。95歳まで生存する人の割合は、すでに男性9.1%、女性25.2%に達しており(厚生労働省「平成28年簡易生命表」)、この割合は増え続けているからである。
普通の会社員世帯で老後資金1億円超不足のケースも
実は普通の会社員世帯でも、キャッシュフロー表を作成すると95歳時の貯蓄残高がマイナス1億円超になる顧客は少なくない。つまり、今の要望通りの生活をしていくと老後資金が1億円以上足りなくなるということだ。その原因として、子どもが中学から私立に入学、あるいは高額な住宅の購入といったことを想像する人も多いかもしれない。そうした一時的な支出も一因であることは多いのだが、一生で考えると「月々の生活費の多さ」の方が影響は大きく、大きなマイナスの主因となることが多い。
世帯主年齢40歳未満の2人以上世帯の消費支出(社会保険料や税金、貯蓄型の保険料などを含まない支出額)の平均月額は約26万円である(総務省統計局「家計調査」<平成28年 年報>)。単純に考えて、妻35歳の世帯が現時点で消費支出が40万円で、その後も妻が95歳になるまで消費支出が平均より14万円多い状態が続くとすると、累計で14万円×12カ月×60年=1億80万円を平均より多く使うことになる。月々の生活費の多さが95歳時のマイナス1億円超の主因になるということを、イメージできたのではないだろうか。