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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

毎月多額の銀行口座引き落とし…シニアは今こそ「おカネの断捨離」で無駄な出費撲滅!

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

 一方、「断捨離、シンプルに生活をする」は、40代女性(26%)や60代・70代女性(29.5%)で、高い割合を占めている。余計なモノを持たない、ムダのない生活がシニア女性を中心に人生の満足度をアップさせる要因ともなっていることがうかがえる。シニアにとって、断捨離がそこまで重きを置かれているのかと思うと驚きの一言だ。

終活・片付けが心身ともに苦痛という人も

 しかし一方で、「終活しなければ」「元気なうちにモノを整理しておかねば」と強迫観念に駆られ、それが精神的かつ肉体的に、ストレスになっている人も少なくないようだ。子どもや家族に迷惑を掛けたくないがために、生前きちんと身辺整理をしておくべし、といった「立つ鳥跡を濁さず」的な思想が、日本人の気質に合っているのかもしれないが、すべての人が思い切りよく断捨離できるわけではない。

 とりわけ、今の70~80代のように、戦時中・戦後とモノがなかった時代を生きてきた方々は、モノを処分する・捨てるということに罪悪感すら感じてしまうのかもしれない。今年78歳になる筆者の母もそんなひとりだから、心情は良く理解できる。

 さらに、シニアの断捨離の大きな障害となるのが、写真やアルバム、日記、書籍といった、簡単に処分できない「思い出の品」が多い点である。懐かしい、思い入れのあるモノに触れたり、振り返ったり。そうして人生の残りを過ごしたいという生き方を否定するわけにはいかない。

シニアの断捨離は、「安全・安心」をポイントに!

 そこでオススメしたいのは、シニアが断捨離を実行する場合、基準として「安心・安全に過ごすため」をポイントにすることである。

 たとえば、家の中にモノが多いと転倒・骨折の危険性が高くなる。国民生活センターの事故情報によると、65歳以上の高齢者は、20歳以上65歳未満の人より、住宅内での事故発生の割合が高い。しかも、事故の発生場所は、「居室」(45.0%)、「階段」(18.7%)、「台所・食堂」(17.0%)など、まさに普段の生活の場である(出所:内閣府「平成29年版高齢社会白書」)。ご高齢のお客さまのなかには、「スリッパをはいていると、転びやすいし、階段なども怖いので、全部捨てました」という方がいた。

 つまり、断捨離の目的を、きちんと整理することよりも、安心・安全に留意し、健康に暮らせるスペースをつくり出すことのほうに重点を置くようにするわけだ。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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