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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

加算税滞納し放置→5年後に突然、税務署に資産差し押さえられ、とんでもない事態に!

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
加算税滞納し放置→5年後に突然、税務署に資産差し押さえられ、とんでもない事態に!の画像1「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きなゲームは「マネーゲーム」です。

 かなりむかし、加算税を滞納したAさんという人がいました。加算税というのは、税金における罰金のようなもので、確定申告をしなかった場合の「無申告加算税」、申告に誤りがあった場合の「過少申告加算税」、申告に仮装・隠ぺいといった不正があった場合の「重加算税」などがありますが、これらは本来払うべき税金に加えて国に納めなければいけません。所得税でも法人税でも消費税でも、正しく申告しなければ、加算税を賦課されてしまいます。

 Aさんも、加算税を賦課されましたが滞納してしまったため、しばらくたってから電話加入権を差し押さえられてしまいました。

 そこでAさんは、加算税の徴収権は、すでに消滅時効にかかっているはずだと裁判を起こしました。現在の国税は、時効の中断には民法の規定が準用されることとなっています。民法には、以下のように規定されています。

「催告は、6カ月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法、家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない」

 つまり、時効を中断するためには、国税側が何かしらの手段で催告をしなければいけないわけです。面倒だからと放っておくと時効が到来して、お金を取れなくなってしまいます。

 また、捜索をしたけれど差し押さえるべき財産がないために差し押さえができなかったという場合は、「その捜索に着手した時に時効中断の効力が生ずる」とされていますし、Aさんが期限後申告、修正申告、納期限の延長、その他国税の納付義務の存在を認識していたと認められる行為をしたときは、徴収権の時効が中断します。

 Aさんに対し、国税は「税金を払ってね」と言いましたが、Aさんがそのまま滞納しても督促はしませんでした。そのまま5年が経過し、電話加入権を差し押さえられたわけですが、時効が中断していれば、なんの問題もなく差し押さえができます。しかし、裁判になり、一審、二審ではAさんが勝ちました。5年の間に督促をしていないので、消滅時効にかかっており、差し押さえはできないと判断されたのです。

最高裁で逆転判決

 その後、最高裁まで争われることとなりました。国税側も無駄なことにコストをかけることはありませんから、勝てそうにないときは一審であきらめます。しかし、上告したのです。

 一審、二審が消滅時効にかかっていると判断したのは、督促に時効中断の効力があると税法に規定されており、それ以外の方法では時効は中断されないと考えたためでした。Aさんに対し、催告して差し押さえをしただけでは時効を中断することができないと判断されたのです。

 しかし最高裁は、税法にそう書いてあるからといって、督促以外の方法に時効中断の効力が認められないわけではなく、「払ってくださいね」と催告した後に差し押さえなどの手続きをとった時には時効は中断されるとし、二審判決を破棄して差し戻しました。

 民事の時効には、5年、3年、2年、1年など、複数の期間がありますが、国税債権は5年の時効となっています。この間、ずっと納税しなければ税金が帳消しになるわけではなく、5年間、いわゆる「請求」をされなければ時効になり、債権が消滅するというものです。しかし、実際に滞納が5年間放置されるようなことは滅多になく、5年間逃げ切ろうと考えるのは浅はかです。

 その間に、年利の高い延滞税で総支払額は増えてしまい、結果的に自分の首を絞めることになります。今回の事案では、「もしや滞納していた納税者が勝つかもしれない」と一瞬思いましたが、やはり無理でした。どんなときも、速やかに納税することをお勧めします。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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