積み上がる不動産担保融資残高
ところが翌2014年4月、消費税が5%から8%に上がった。これによって、日本経済は再び失速した。すると黒田総裁は10月に「異次元金融緩和第2弾(黒田バズーカ2)」を宣言。さらなる金融緩和を行った。
具体的には長期金利をゼロに据え置き、市中銀行から国債を大量に買い上げる。さらにETF(上場投資信託)を購入して株価を下支えする。これにより、発行された国債残高の半分は日銀が保有。主な上場企業の筆頭株主は日本銀行となった。さらに、優良企業やリート(不動産投資信託)は0.1%とか0.2%程度の金利で融資が受けられるようになった。普通の人が借りる住宅ローンでさえ、最安は0.4%程度になった。
日銀はこのように市場に大量のお金を流し込むことで、経済的なデフレから脱却して「年2%程度のインフレに導く」という目標を掲げた。当初この目標は「2年程度」で達成できるとされていたが、6年たった現在も未達である。
一方、銀行の金庫には利子を生み出さないお金が積み上げられた。一般企業が設備投資を行うため銀行融資を受けやすい状態である。しかし少子高齢化と人口減少でほんの少ししか経済成長が見込めないこの国では、企業の設備投資意欲が盛り上がらない。
唯一、景気よくお金を借りてくれる相手は、不動産投資を行う人々。あるいはそういう投資家がつくった法人。そんな彼らにお金を貸すことで急速に業績を高めたのが、スルガ銀行だった。そのスルガ銀行のビジネスモデルをときの金融庁の長官が絶賛。不動産担保融資は急速に融資残高を伸ばした。
一方、住宅ローンが0.5%程度で借りられることになったので、新築マンションの購入予算は2.5%の時代と比べれば2割程度かさ上げされた。
タワマン爆買い、そして終焉
折しも、日本はインバウンドが急増する時代を迎えていた。ホテルの稼働率は以前には考えられないくらいに高まった。また「五輪に向けて宿泊施設が足りない」という問題も浮上。首都圏ではホテル建設のブームが始まった。都心ではマンションデベとホテル業者が土地を奪い合う現象も見られ始めた。
2015年1月、相続税の控除率が変更された。23区内で普通に持家があるレベルの人まで、相続税の心配をしなければいけなくなったのだ。また、多くの富裕層の高齢者が相続税対策を考えるようになった。彼らは基本的に不動産好きである。