市場では依然として先行きを強く見る向きが多く、「下落すれば昨年10月のように日銀、公的資金の援護が入るので安心感があります。『国策に売りなし』で、日経平均は年内に2万円台に乗るでしょう。バブル崩壊後の最高値(1996年6月に記録した2万2666円)の奪回も可能です」(準大手証券営業マン)と威勢の良い声も聞こえる。
万年強気が宿命の証券関係者ばかりではなく、比較的慎重な見通しを立てる生命保険会社や信託銀行の関係者にも「日経平均2万円」を予測する向きは少なくない。その根拠になっているのは、日経平均の年間変動率のようだ。銀行系アナリストは次のように解説する。
「過去の推移から見て、日経平均2万円は必ずしも困難な水準ではありません。バブル崩壊後も、日経平均の年間変動率(年間高値÷年間安値)はおおむね30%から40%台のゾーンです。現状をブルマーケット(強気の市場)と捉えて上げ幅20%、下げ幅10%と想定しても、1万7000円から20%上昇で2万400円になります」
簡潔明瞭な説明である。市場関係者のみならず、経営者や個人投資家などを対象としたアンケート調査を見ても、日経平均は2万円ないしその前後を今年の高値とする回答者が多い。彼らも、過去の年間変動率を参考にしているのかもしれない。
もっとも、市場の多数意見にしたがって株価が動くのであれば誰も苦労しない。投資の心得のある方は実感できると思うが、株価は多数派の思惑通りに動くほど素直ではなく、市場の見方をあっさり裏切ることも多い。
●実は難しい日経平均2万円
過去の年間変動率に基づいて考えると到達可能に見える日経平均2万円だが、別の角度から見ると、また違った見解になる。それは、個別銘柄の株価水準だ。
日経平均は「日経225」とも呼ばれるように、東京証券取引所の市場第一部に上場されている代表的な銘柄225社の株価によって計算されている。価格が変動する仕組みをわかりやすく示すと、日経225の対象になっている企業の株価が1円上昇(下落)すると、日経平均は約0.04円上昇(下落)する。同じく100円上昇すれば約4円、1000円なら約40円上昇することになる。