玉木雄一郎代表率いる国民民主党の衆院議員7人が、立憲民主党などと組む衆議院の統一会派から離脱した。もともと立憲民主党と合併したくない面々が国民民主党に残ったわけだから、両党のそりが合わないのは当然ではあるが、臨時国会開会直前の離脱決定となったため、10月26日の召集日に新会派結成の届け出が間に合わないドタバタぶりだった。
衆院議員7人の弱小部隊では所属できる委員会が限られるなど、国会活動が制約される。そこで、希望の党会派の2人の議員と無所属の1人が加わり、10人の新会派「国民民主党・無所属クラブ」として活動することになった。
希望の党といえば、前身政党の“創業者”は小池百合子東京都知事だ。2017年の衆院選で前原誠司代表の民進党が合流、小池氏の「排除」発言により弾かれた枝野幸男氏らが立憲民主党を立ち上げざるを得なくなるきっかけとなった政党。国民民主には前原氏もいるだけに、「元のさやに戻るということか」と揶揄する声も聞こえる。そのうえ、現在のメンバーの中山成彬議員は右寄りとして知られる人物。会派の人数を増やすためとはいえ国民民主党はこのまま右いっぱいまで舵を切るつもりなのか。
「国民民主党は分党時に、いったんは衆院だけは統一会派に残ることを決めた。来年10月までに衆院選が行われることを考えると、衆院選は小選挙区制なので野党側で候補者調整をするしかないし、連合が立憲と国民の両方を支持することになっていますから。しかし、党内では、立憲が嫌で別の政党になったのに、なぜ統一会派にとどまっているのかという不満が噴出し、玉木代表が突き上げをくらっていた。玉木降ろしで、再度代表選を行い、代表を前原氏に交代すべきだという話も浮上していた。玉木代表自身も統一会派内で国民民主が埋没することを恐れた。それで離脱を決断したわけです」(立憲民主関係者)
どうも迷走している感は否めない。玉木代表は統一会派離脱について「別会派だと独自性を出していける」と前向きに発言している。だが、この「独自性」というセリフ。分党前の国民民主党代表の時代から口にしていたのではなかったか。
“なんでも反対”の立憲民主党との違いを出すため、「提案型野党」を謳い、「重箱の隅をつついているだけではダメだ」と言って独自色のアピールに精を出してきたのが玉木氏だった。それを世論に訴えかけるべく、多額の広報宣伝費も掛けた。「こくみんうさぎ」を党公認キャラクターにしたり、代表自ら戦国武将に扮したCMを制作したり。大型トラックに220インチの巨大LEDモニターを積んで全国街宣キャラバンをやったりもした。
「民主党時代からの潤沢な資金があるのをいいことに、玉木氏は湯水のごとくカネを使った。100億円あるといわれていたが、分党直前には50億円を切っていましたからね。しかし、2年間そうやってカネをかけても支持率は1%のままで上がることはなかった。党名すらまともに有権者に覚えてもらえない。その焦りが党内からの立憲との合流要求につながったのです。60人規模の政党でも独自色も存在感も出せなかったのに、参院議員を含め15人という小所帯になってあがいても厳しいでしょう」(立憲民主関係者)
結局、国民民主党は次期衆院選までの“時限政党”となる可能性が高い。
「玉木代表は『全員当選』を掲げています。しかし、議員それぞれ事情が違う。玉木氏(香川2区)は保守系地盤からも支持を得ていて小選挙区でも勝てるでしょうが、古川元久氏(愛知2区)はそう安泰ではないので立憲との協力が必至。一方、前原氏(京都2区)と岸本周平氏(和歌山1区)は関西圏で絶大な強さを誇る維新に自分の選挙区での候補擁立を回避してもらいたいので、維新との協力を望んでいる。
山尾志桜里氏(愛知7区)は比例東京ブロックに選挙区替えしたものの当選は無理でしょう。前の国民民主でも2019年の参院選の東京選挙区でわずか19万票しか取れませんでしたから。前回2017年の衆院選では東京ブロックで1議席を獲得するのに30万票以上が必要でした。あの時、維新が19万票で議席ゼロでしたからね」(野党系選対関係者)
「独自色」なんて粋がっていられるのも、今のうち。いずれ雲散霧消の運命だろう。