ASKAを批判する人は、けしからん?なぜ芸能人は覚せい剤にハマるのか、過去に多数逮捕
「社会的に影響力のある人が、麻薬・覚せい剤を使うのはけしからん」というのは、いかにも学級委員が言いそうな正論であり、まったく間違っていないが、そもそも芸能人は麻薬・覚せい剤を使ってしまう存在なのではないかとも考えられないか。仕事の忙しさ、プレッシャー、孤独感などからそうなるのか。下手にお金があるからそうなってしまうのか。やはり黒いつながりがあるのか。
●罪を憎んで作品を憎まず
そして、芸能人が逮捕されるたびに、ASKA逮捕の件ではCHAGEのように、コンビを組んでいる人、交友関係のある人の悲痛の声、友人代表としての謝罪などがメディアを通じて報じられる。
ただ、彼らもショックを受けていることに同情しつつ、空気を読まず、こう問いかけたい。「あなたも、なんとなく、わかってたんじゃないの?」と言いたくなる。相棒、友人が麻薬・覚せい剤を使っているかどうかまではわからないまでも、明らかに言動がおかしい、衰弱していることなどには気づいていたのではないか、とも思うのだ。
この手の不祥事のたびに、過去の作品の回収や配信停止といった話になり、結果としてAmazonなどのネット通販サイトで中古品の値段が上がり続けたりする。いや、レコード会社としてのケジメのつけ方なのだろう。対応としてはわからなくはない。ただ、ここは「罪を憎んで作品を憎まず」のスタンスでいくのはどうだろうか。
筆者が小中学生だった頃、すでに学校では合唱でビートルズの『イエスタデイ』を歌っていた。やや記憶が曖昧だが、教科書にも掲載されていたと記憶する。ビートルズのメンバーが一時、麻薬・覚せい剤にハマっていたのは、コアなファンではなくても知っている。そもそも、逮捕され明るみに出たから不祥事になるわけで、逮捕はされないものの麻薬・覚せい剤を常用している芸能人はほかにいてもおかしくない。
私たちは、普段から麻薬や覚せい剤だけでなく、性関係の乱れ、暴力、メンタルヘルスの問題、暴飲・暴食、宗教観の違い(これは思想信条の自由ではあるが)などを抱えている人たちのパフォーマンスを安く、多くの場合は無料で楽しんで生きている。そもそも彼らが危うい世界に生きていることを理解したい。その点、ASKAの逮捕後、ライブで『SAY YES』を熱唱した玉置浩二は男らしい。彼自身、安全地帯のボーカルでありつつ、女性関係は危険地帯だったわけだが。
芸能人が麻薬・覚せい剤で逮捕されることの社会的影響は大きいわけだが、いい子ぶって「けしからん」とだけ言うのもけしからんと思うのだ。
●常見陽平(つねみ・ようへい)
評論家、コラムニスト、MC。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。著書に『「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える』(NHK出版新書)、『最新版 就活難民にならないための大学生活30のルール』(主婦の友社)など多数。