50代が迫られる人生の決断…定年まで会社にしがみつくのか?独立してもう一花咲かせるか?
終身雇用制度が機能していたのは、もう昔の話。かつての企業は新卒入社した社員を定年まで面倒を見るのが当たり前だったが、今では誰もが知る一流企業が「早期退職制度」を使って退職者を募ることも珍しくない。
早期退職のターゲットになるのが50歳以上の社員である。『会社を50代で辞めて勝つ! 「終わった人」にならないための45のルール』(集英社/高田敦史)は、企業がこの世代の社員に「できれば自分から辞めてほしい」と考えている現実を浮き彫りにしていく。
こうした人に向けて、定年まで会社にしがみつくのではなく、独立して新たな人生を踏み出す可能性を示す本連載。最終回は、実際に50代で会社を辞め、フリーランスとして活動を始めた人の例を見てみよう。ほかならぬ、著者の高田敦史氏の例である。
トヨタで部長まで務めた男が定年前に独立したワケ
高田氏はトヨタ自動車で部長まで務め、役員も見えてきた50代前半で独立した。「何がなんでも出世を」というタイプではなかったのに加え、55歳までに独立するということを自分の中で決めていたそうだ。
一方で、「役員になったらどうしよう」という考えも頭の中にあったという。もし役員になってしまったら、少なくとも60代半ばまでは会社に残らざるを得なくなってしまう。自分を推薦してくれた上司や関係者の手前、1年や2年で退任したのでは、義理を欠くことになってしまうからだ。当然、55歳で独立というプランは実現できなくなる。
しかし、結果的に高田氏が役員になることはなかった。そのため、独立するプランが本格的に動き出したという。
とはいえ、当時の高田氏は、独立後にどんなことをしようというビジョンも、見通しも、収入の目標も具体的には描いていなかった。それどころか、会社をどう辞めるかも、退職金をどうやってもらうかも、個人事業主にはどうやったらなれるかもわからなかったという。
そこから実際に退職するまでの期間で、高田氏は独立する計画を具体化し、どんな仕事をするか、どこから仕事が取れるか、どれくらい稼げるかといったことをシミュレーションしていった。
高田氏がまずやったのは、これまでかかわってきたさまざまな人たちと会って、相談すること。同じように定年前に会社を辞めた人には「どのように会社を辞め、今何をしているのか」、仕事で世話になった人には「今自分が会社を辞めたら、何かお役に立てる仕事はあるか?」、長年自営業をやっている人には、年金や税金などお金まわりのことを相談した。こうした聞き取りを重ねるうちに、「トヨタでの当時の年収と同じくらいとはいかないまでも、食べていくのには困らないくらいのお金は稼げるだろう」というめどが立った。
高田氏が、長年働いてきた自動車業界ではなくマーケティングを切り口にフリーランスとして活動している点も重要だ。慣れ親しんだ業界の周辺から仕事をもらって活動するフリーランサーがいる一方で、自分の専門とする職種から活躍できる領域を見定めたフリーランサーもいる。どの領域で独立するかは、「勝ち負け」に直結する大事なポイント。自分の需要はどこにあるかを考える上で、高田氏の経験は参考になる点が多いはずだ。