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安達裕哉「仕事ができるやつになる最短の道」

●●ができる人は仕事で信用できる!ダメ新入社員にはこれをさせろ!

文=安達裕哉/経営・人事・ITコンサルタント
●●ができる人は仕事で信用できる!ダメ新入社員にはこれをさせろ!の画像1「Thinkstock」より

 世の中には、2通りの人がいる。雑用を嫌々ながらやっつけでやる人と、丁寧にやる人だ。

 もちろん誰も雑用などやりたいはずもなく、進んで引き受ける人は奇特である。だが、「いずれにせよ誰かがやらなければならない」という時に取る態度によって、その人が信用に値する人物かどうかわかる。

 筆者がそれを体験したのは数年前、ある製造業の会社を訪問した時のことだ。

0629_sinkanjp.jpg『仕事ができるやつになる最短の道』(安達裕哉/日本実業出版社)

 その会社は、とにかく現場をきれいにすることに固執していた。製造業で働いている人ならばよくご存じだと思うが、現場のきれいさ、整理整頓のなされ方を見ると、その会社の技術力や品質はほぼわかる。

 そのことを熟知しているのか、その会社も「現場がとてもきれい」であった。

「現場がとてもきれいですね」と率直な感想を言うと、経営者は「ありがとうございます。でも、まだこんなレベルでは世界で戦えません」と答え、続けて「新しく会社に入ってくる社員の意識改革が大変なのです」と語った。

 筆者は、その意味するところを詳しく聞いた。

経営者:古い考え方かもしれませんが、私どもの会社では「雑用をとにかく丁寧にやる」ということを徹底しています。それが新しく入った社員にはなかなかわかってもらえない場合もあり、苦労しています。

筆者:「雑用を丁寧に」ですか。

経営者:そうです。雑用を丁寧にやる人は信用できます。

筆者:それは、なぜでしょうか。

経営者:いくつか理由があります。ひとつ目は、つまらない仕事でも丁寧にできるということは、その人に仕事を自発的に面白くできる能力があるといえます。

筆者:確かにそうかもしれません。

経営者:そのような能力のある人は、何事も途中で投げ出したり、不平不満を言って周りを困らせたりはしません。

 2つ目は、「神は細部に宿る」を体現しているのです。製造業は特にそうかもしれませんが、品質を大きく左右するのは製品の中心部ではなく、細部のつくり込みです。もはや製品の差別化は機能ではなく、細かいところに驚きがあるかどうかです。「こんなところまで丁寧につくってあるのは素晴らしい」という声が聞けるかどうかといってもいいでしょう。そのような観点で見ると、雑用を丁寧にやる人は細かいところまで手を抜かないといえますから、賞賛すべき能力です。

筆者:細部のつくり込みと、それによって生み出される驚きが製品の良さを決めるという点には完全に同意します。ある方が、「デザインは細部に手を抜いていないかどうかで、全体のクオリティが決まる」と言っていたのを思い出しました。

経営者:さらに、3つ目も大事です。雑用を丁寧にやる人は、我慢強い人です。仕事で重要なのは、我慢強さと粘り強さです。雑用をきちんとやるかどうかは、その人の性格を知る上でかなり良い指標となります。

会社全体で雑用の改善に取り組む

筆者:なるほど。しかし、ひとつ疑問があります。雑用が“頼みやすい人”に集中してしまい、不公平感を生み出すということはないのでしょうか。「本業で成果を上げていれば雑用はやらなくてもいい」と考える人は、どの職場でも一定数存在するように思えます。

経営者:そうですね。確かに雑用は頼みやすい人に集中します。いくら雑用を機嫌よくやってくれるからといって、それを放置するのは公正とはいえないですね。

筆者:そう思います。

経営者:私どもは、その問題にも取り組みました。雑用に対しては会社全体で取り組む必要があります。

 そこで私どもは、半期単位で行った雑用を棚卸しして申告してもらい、その雑用に対する改善提案を挙げてもらいます。改善の内容は「なくせる」「もっと楽にできる」「外に任せる」の3種類です。

筆者:面白いですね。

経営者:その時に改善内容によってはボーナスを与えます。雑用は放置するとどんどん増えてしまうため、定期的に整理が必要です。雑用を数多くこなし、改善した社員には金銭で報いるということを徹底した結果、かなりの業務効率化につながりました。

 ただ、その価値観を新しく入ってくる社員に伝えるのは結構大変です。先輩が模範を見せる必要があるので、社員が入ってくるたびに先輩が雑用をがっちりやることになります。それも先輩のやるべき仕事のひとつといえます。

筆者:ありがとうございました。とても勉強になりました。

 雑用もシステマティックに行えば、会社の体力向上につなげることができるということだ。
(文=安達裕哉/経営・人事・ITコンサルタント)

安達裕哉

安達裕哉

経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所のひとつである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数150万以上。


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