職場の部下がうつ病になり、休職や退職を余儀なくされる。そんな状況を横目で見ながら、内心「追い詰めてしまったのは自分かも…」と、一人自責の念にかられている世の上司は少なくないだろう。
『メンタルタフネスな会社のつくり方 メンタルリスクを回避し、企業の生産性向上を実現する』(株式会社アドバンテッジ リスク マネジメント・編、ダイヤモンド社・刊)では、最新の調査結果にもとづき、部下を病ませないために上司が気をつけるべきポイントが解説されている。
最新の調査でわかってきたストレス要因
まず、「心身の調子を崩す要因」と言われて、あなたはどのようなものをイメージするだろうか。
法令違反レベルの長時間労働を強いられる劣悪なケースは論外だが、他にストレスを助長してしまう要因として「仕事量の多さ」や「仕事内容の高度さ」などが頭をかすめる人もいるかもしれない。
だが実は、そうしたものはストレスを助長する大きな要因ではない。最近行なわれたストレス要因分析によれば、以下のような要因のほうがストレス反応(※1)との相関が強いことがわかってきているのだ。
・ビジョンの共有/充実感
…「会社のビジョン」、「自分の仕事の意義」をきちんと理解しているか
・仕事の裁量
…権限を委譲されて働いているか
・職場の人間関係
…良好な人間関係が築かれているか
過干渉タイプのマネジメントは高リスク
上で挙げた要因のうち、ここでは二つ目の「仕事の裁量」について詳しく取り上げよう。
結論から言えば「自分のやり方で仕事を進められない」、つまり裁量権をもたないビジネスパーソンのストレス反応は悪くなる傾向が高い。上司から言われるまま、機械のように働き続けることで、部下は無力感を強めてしまい、結果としてメンタル不調になりやすいのだ。
こうした状況を避ける上で重要なのは、上司と部下の関係のつくり方だ。とりわけ部下がストレスをためないようなマネジメントの仕方を上司側が学ぶことが必要だという。
いちばんいけないのは、上司が過干渉の親のように部下の仕事にいちいち口を出すこと。これでは、部下が「上司からコントロールされている」と感じてしまう。
そこで上司には、「出しゃばりすぎない」マネジメントスタイルが求められる。部下が悩んでいるときはポンとヒントを出し、うまくできたときにはそっと褒めることで、部下は「仕事を任されている」と思えるようになるのだ。どうしても「ここは直してもらいたい」ということが出てきたら、できるだけその場でササッと短時間でのフィードバックをすることも重要だ。
本書には、「精神疾患者の休職は半年で400万円以上」(※2)、「メンタル不調による休職者の退職率は42.3%」(※3)など、企業にとってショッキングな数字が並ぶ。
マネジメントする側が、メンタルリスクに関する必要な知識をもち、然るべき対処をすることは、こうした損失を避けることにつながる。
また何より、従業員一人ひとりが活き活きと働けるようになることで生産性が上がり、企業イメージも良くなる。そのことは結果として、優秀な人材を惹きつけることにつながり、現場の負担を減らすことになるだろう。
※1…ストレッサー(ストレス要因)によって引き起こされるもの。いらいら、落ち込み、不眠などといったものがある。
※2…従業員1,000人未満の中規模企業で、30代後半・年収600万円の男性従業員が1人、うつ病などの問題を抱えて6か月間休職したケースを想定。「男女共同参画社会・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」による試算。
※3…独立行政法人労働政策研究・研修機構が2012年に実施した「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」と2013年に実施した「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」に基づく。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。