女子サッカー日本代表は強かった。2011年にはワールドカップで優勝し、2012年にはオリンピックで準優勝を果たした。2014年にはアジアカップで優勝もしている。
だが、2016年のオリンピックには出場すらできない。まさかの予選敗退という結果だった。
■長く引っ張りすぎた「黄金時代」
なぜ、栄華を極めたチームがこの大切な試合で負け続けたのか?大きな理由として挙げられているのが、「世代交代の失敗」だ。
今回の代表メンバーは20人いるが、そのうち14人が2011年W杯組。つまり、5年前の黄金時代のメンバーとほとんど変わらないままだったのだ。
他国のチームの平均年齢は24歳前後。しかし、日本代表の平均年齢は27.1歳であり、明らかに若返りに失敗している。大儀見や宮間といった2011年W杯組も、今回の予選では精細を欠いていた。
なぜ世代交代に失敗し、五輪出場を逃すという悲劇を招いたのか? そこには、「目先の勝利を追う」ことの罠が隠れていた。そして、その罠の危険性を見抜いている一人の男が、日本にはいる。
■勝つことは、実はリスクでもある
「ウメハラ」と呼ばれるプロの格闘ゲームプレイヤーがいる。彼は昨年、アメリカで開かれた格闘ゲームの世界大会で730万円の賞金を獲得した。格闘ゲームに詳しくない人からすると驚きだが、アメリカではプロゲーマーは尊敬の対象であり、ウメハラ氏は「レジェンド」と呼ばれている。
ウメハラこと梅原大吾(うめはら だいご)氏は17歳の時にゲームの世界大会で優勝。ギネス・ブックに「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」として登録されている。つまり、ウメハラとは「最も長く勝ち続けている」男なのである。
『勝負論』(梅原大吾著、小学館刊)は、勝ち続けてきた男の哲学が書かれている本であり、ビジネスマンにも広く支持されている一冊だ。この本の中に、なでしこジャパンの敗因が書かれている。
以下は、本書からの引用である。
===(以下、P58から引用)
何でも構わないから勝てばいい、という人がいる。僕が「勝ち続けることが大切だ」と言うと、そういう意味だと誤解する人も少なくない。またそうした人が、現時点では実際に強さを発揮し、結果を出している場合もある。
しかし、なりふり構わずただ結果としての「勝ち」だけを追いかける人は、長期的には伸び悩む。成長を持続できないからだ。
勝つことはいい。しかし、ある時点で勝利という現象を手に入れたことで、できないことをできるように改善する力、知らない知識を仕入れ、自分のものにする作業が鈍ってしまったら、結局どうにもならないのだ。成果が出たことで甘えが生まれ、たるんでしまうのである。
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