将棋や囲碁での人工知能とプロ棋士との対戦が話題になり、身近な家電では、自動掃除機「ルンバ」など、人工知能がわたしたちの生活の中に着実に増えてきている。
そして、人工知能が着実に定着しつつある業界が自動車だ。自動運転の技術開発が進んでいるのである。2017年にレベル2(システムが加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度に行う)の準自動運転車の市販を発表したメーカーもある。
『文系でもわかる人工知能ビジネス』(EYアドバイザリー著、日経BP社刊)では、2020年を想定し、人工知能によって大きく変わるわたしたちの仕事と暮らしを「物語」形式で紹介する。
■自動車の自動運転で改善できる3つのこと
では、自動車の自動運転が実用化されることで、どんなメリットがあるのだろうか。本書から3つ挙げてみよう。
1.運転時間を有効活用できる
Google社における自動車運転の研究開発で有名なSebastian Thrun氏は、米国における労働者は1日平均52分を通勤渋滞で過ごしていると自動運転者を利用すれば、ドライバーの無駄な時間を有効活用できるようになると述べている。例えば自動走行モード中にも食事をしたり、パソコンをするなど、今までよりも時間を有効に使えるようになるはずであり、運転の疲労の軽減にもなるだろう。
2.運転手の不注意による交通事故の防止
交通事故の多くは、運転者の認知・判断・操作におけるミスが要因とされているが、自動運転車の普及により、人の不注意によるミスから起こる交通事故を防ぎ、死傷者を減らすことができると期待されている。これは実際に米コンサルタント会社のマッキンゼーが、自動車事故全体の90%を削減できるかもしれないというレポートを出している。
3.車間距離を適正に維持できることによる渋滞緩和
あの醜い渋滞の緩和も可能になるかもしれない。渋滞の原因の一つは、一定の速度と車間距離を維持することができず、車の流れが悪くなることが挙げられる。しかし、自動運転車は適正な車間距離を保つように制御を行ってくれるため、渋滞が緩和されることが期待される。
■近い未来に自動運転車は街を走り回るか?
自動運転には、大きく分けて2つの概念に分かれる。ドライバーが運転に全く関与しない「完全自動運転車」と、高速道路や駐車場などの特定に場所で自動走行を実現する「準自動運転車」だ。
本書では2020年の世界で人工知能によって進化した人々の生活を描いているが、自動運転車が2020年までに、一般社会で実現しているかは断定できない。一方、準自動運転車は実現されていることが予測される。もっと先を見据えれば、街を走る車がすべて自動運転車という時代も来るかもしれない。
人工知能の可能性には賛否両論あるが、人間が良い方向に進化させていけば、人工知能によって働き方や暮らし方も良いものになっているはずだ。交通事故を無くすという意味でも、自動運転車はとても期待ができるシステムだろう。
また、自動車だけでなく、さまざまな身近なところで人工知能が用いられることになるだろう。本書では人工知能を扱ったビジネス全般について触れている。これから先、具体的にどんな世界に変化していくのか。そんな未来の生活を物語からわかりやすく読むことができる1冊だ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。