伊藤: 厳しいですね。株だけで経済的に自立するとなると、デイトレードをするか、そうでなければ億単位の種銭が必要です。
実際、自分の周りにも株だけで生活しているひきこもりの方はいません。ただ、株をやることで自信がついて、アルバイトを始めたという方がいる。
得られるお金はわずかでも、社会に関心が向いたり、物事を自分で決定する主体性が得られるのであれば、やる価値はあります。株とアルバイトを並行して生活していくというのが、目指すゴールだと思います。
――買ったまま放っておくにしても、素人ですから多少の勉強は必要ですよね。
伊藤: 勉強は絶対にやってはいけません。ひきこもりの人の性格的に、勉強をすると、5年後も10年後も実際に株を買わずに勉強だけしているということになりやすい。
彼らの行動は、本質的に「自慰行為」になりがちなんです。勉強をすればひきこもっていることへの不安が紛れるから勉強はするけど、その勉強で何かを現実化させようとはしない。それでは意味がないでしょう。
だから勉強せずにいきなり株を買ってしまった方がいい。買うべき株は本で書いていますが、基本的には「ネット証券を使って自分が知っている日本株だけを買う」という一点です。
股間をクリックするのはやめて、マウスをクリックしましょう。どうしても勉強したいなら、まず株を買ってから「復習」としてやればいいわけですから。
――しかし、元手が必要でしょう。
伊藤: そこは親御さんに期待ですね。仮にも働かない人間を養うくらいの経済力はあるわけですから、それを少し分けてもらえば十分に株はできます。ただ、生活保護を受けている方は難しいかもしれません。
――本書は、ひきこもりやニートの方だけでなく、その家族の方々も無視することができない内容だと思いました。伊藤さんとしては、やはりひきこもり当事者に読んでほしいとお考えですか?
伊藤: もちろん、ひきこもり当事者にも読んでほしいのですが、ひきこもり関連本を読めるような鋼のメンタルを持っているひきこもりはレアですから、まずはご家族の方に読んでいただきたいです。
それと、この本で提示している「無理に働かず、ひきこもったまま株式投資でお金を得よう」という生き方は、ひきこもり支援者の方と、支援をデザインしている人に向けての一種の挑発です。
「ひきこもりの高齢化」が各メディアで問題視されていますが、「就労」も「障がい者認定」も拒否していれば、高齢化するのは当たり前ですよ。これらの選択肢を提示する行政の今のやり方で成果が出ていない以上、別の選択肢を考える時期に来ているのは確かだと思います。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。