近年、「働き方」をめぐる議論が活発だ。政府が「働き方改革実現会議」を開催する一方で、長時間労働による過労死が問題視されている。もはや終身雇用制度は崩壊しており、「大企業に勤めていれば安心」という時代でないことは誰の目にも明らかだ。また、一時期もてはやされた成果主義も定着したとは言い難い。
そんな中、自分の力で稼ぐ「起業」という選択肢を選んだ人たちがいる。会社に頼らず独力でビジネスを展開する起業家および起業は、魅力的な働き方・生き方のひとつである。とはいえ、そこには人と人とのつながりも欠かせない。
本連載では、そんな起業家の中で今注目の3人を取り上げ、起業の経緯やビジネスの醍醐味についてのお話を、4回に分けてお伝えする。聞き手は、タレントの杉原杏璃さん。グラビアアイドルとして活躍する傍ら、株式投資で成功して「財テクタレント」の顔も持つ杉原さんが、若手起業家の素顔に迫るという異色対談だ。第1回は、株式会社EXISTi代表取締役の森下翔悟氏。
大手IT会社のSEから、転職ではなく起業
杉原杏璃さん(以下、杉原) 森下さんは、起業される前は何をしていたのですか?
森下翔悟氏(以下、森下) 大手IT会社のシステムエンジニア(SE)です。大学時代、「就職するなら銀行かIT」と決めていて、就職活動をする中でご縁があり、その会社で働くことに決めたんです。
杉原 では、比較的希望通りの仕事に就くことができたんですね。新卒で入社した会社でのお仕事は充実していましたか?
森下 そうですね。6年間SEとして働いたんですが、入社3年目ぐらいから日本と海外を横断するようなプロジェクトを任せてもらえるようになり、それぞれの国を往復する生活を送っていました。日本企業を主なクライアントにしている中国企業と仕事をしていて、20人くらいのチームを率いてプロジェクトを回していたので、やりがいはありましたね。
杉原 入社3年目でそんなに大きなプロジェクトを任されるなんて、とても優秀だったんですね! 日々、やりがいを感じて仕事をされていたとのことですが、なぜ起業しようと思ったのですか?
森下 仕事は楽しかったのですが、残業が多かったり、リーマン・ショック以降は業界全体が落ち込んで全社的に受注数が減っていたりしたのです。私の部署には60人ほど社員がいたのですが、そのうち約半分の派遣社員はほとんど契約打ち切りになってしまいました。その上、正社員が次々と子会社に出向になり、「このままでは先がない」と思ったんです。それに、社会情勢を考えたときに私たちの世代は老後の不安が多い。それなら、自分の将来は自分で守らないといけないじゃないですか。