ネズミは楽しいと笑い声をあげる、と聞いて信じられるだろうか。
そればかりではない。遊び好きで、なおかつ他者の悲しみに寄り添える。後悔したり、負け続けると自信を失う。孤独がつらい。これらはどれも、ネズミの生態なのだそうだ。なんだか、人間そっくりである。
■ネズミは笑う しかしその声は…
日本で日常見かける「ネズミ」といえば、飼育されているハムスターや繁華街などで見かけるドブネズミ、屋根裏にいるクマネズミ、農村や農耕地で見かけるハツカネズミあたりだろうか。そんなネズミの生態を教えてくれるのが『ネズミのおしえ ネズミを学ぶと人間がわかる!』(篠原かをり著、徳間書店刊)である。
著者の篠原かをりさんは、「生物をこよなく愛する理系女子」としてクイズ番組「Qさま!!」に初出場し優勝。その後、テレビやラジオで活躍し、「世界ふしぎ発見!」ミステリーハンターを務めている。ネズミに魅せられ自宅でも、ドブネズミやハツカネズミ、スナネズミ、コビトハツカネズミ、ハムスターなど累計40匹以上の飼育経験がある。
動物が笑っているような表情をしていることがあるかもしれないが、実はほとんどの動物は笑っていると断定できない。「笑う」ことが確認されている動物は、人間、チンパンジーやゴリラなどの類人猿。そして、類人猿意外で笑う動物がネズミなのだという。
2016年、ネズミが笑うときの表情や活動している脳の部位が解明された。母ネズミに可愛がられているときや小ネズミ同士でじゃれあっているときに笑い声をあげるのだ。実験では、人間がくすぐってネズミを笑わせることもできたという。
ただ、残念ならがネズミの笑声を人間が聞くことはできない。人間の耳が聞くことのできる音の可聴域は、およそ20Hz~20000Hzとされるのに対し、ネズミの笑い声は50000Hz。ネズミはとても高い声で笑っていたのだ。また、ネズミが不快な声を出すときは、20000Hzといわれているので、耳の良い人ならば聞くことができるかもしれない。
人間とネズミが似ているところはまだまだある。人間にとって孤独はつらいものだが、ネズミも孤独はつらいようだ。ネズミは群れで生活を行い、孤独になることでストレスを受けることが実験で証明されている。
マウスやラットを数日間から数週間、単独飼育することでストレスを書ける実験をしたところ、孤立状態にあったネズミは、複数匹で飼育されているネズミに比べて攻撃的であったり、不安行動が強いといった特徴を見せたという。ただし、ネズミにも個体差はあり、他のネズミと共同生活を送ることが難しいネズミもおり、単独飼育したら、のびのびと生活できるようになるケースもある。これもまた人間に似ているかもしれない。
「ネズミを知ると見えてくるのは、私たち人間の姿だ」と、篠原氏は述べる。ネズミの生態を知ることで、ネズミから学ぶことも多いのかもしれない。そんなことを思わせてくれる一冊である。
(T.N/新刊J P編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。