少子高齢化が進み、今後労働人口が減っていくことが確実な日本において、「生産性向上」は喫緊の課題だ。
よく言われているように、日本の労働者の生産性は、他の先進国と比べるとかなり低い。労働者1人の時間当たり労働生産性は41.3ドル(2014年)、これは主要先進7カ国中最低で、仮に2倍になったとしても世界3位にすぎない。
「2倍になっても3位」という世界との開きはショッキングだが、いち企業に目を移せば「従業員の生産性が2倍」になったら革命的だ。『稼ぐ人財のつくり方 生産性を2倍にする「攻めの人事」』(日本経済新聞出版社刊)は、これを達成するための取り組みを、人事の面から明かしている。
■企業の生産性を決定づけるのは「人事」である
「生産性向上=現場がとりくむこと」という認識は未だに根強いが、実際には企業の生産性向上のカギを握るのは人事部である。
単純に考えても、優秀な人員を採用し、育成して、適材適所に配置すれば生産性は上がる。これらはどれも人事部の仕事だ。
「採用」を例に挙げてみよう。「企業が求職者を選ぶ時代から、求職者が企業を選ぶ時代」という近年の変化によって、もう企業は待遇や職務内容だけで優秀な人材を確保できなくなりつつある。
となると、企業の採用チーム側も学生や求職者が何を望んでいるのかを理解しつつ、自社の価値観を反映したPRすることが求められる。そのためには、入社後に考えうるキャリアについては可能な限り具体的に示した方がいいだろうし、社費留学や社内転職制度の有無などもアピール材料になる。
本書によると、この際にポイントとなるのは、他部署・他チームとの連携だという。
社費留学であれば、採用チームよりも人事制度チームの方がその良さを理解しているはずだし、入社後の研修プログラムであれば教育チームの方が詳しい。採用チームが知らない会社のいいところというのも多くあるはずだ。
もはや採用活動は採用チームだけで行うものではなく、人事部内あるいは他部署との協力体制が必要となってくるのだ。
■ローパフォーマーにこそ注目すべき理由
また、付加価値の高い仕事をする従業員を育てるための教育も、生産性の向上には欠かせない。
ここで大切になるのは、「ローパフォーマー」の扱いだ。組織が期待する役割を果たせなかったり、思ったような成果を出せなかったりと、業績に貢献できないローパフォーマー社員は当然、上司からの評価は低い。
しかし、見落としてはならないのは、彼らには二種類ある点だ。一つは、仕事に必要な基本的スキルを持っていないタイプ。そして、もう一つは能力的には問題がないものの、仕事や上司とのミスマッチによってパフォーマンスが上がらないタイプである。
人事の仕事としては、特に後者を見逃さないことだ。上司の指示に二つ返事で従うのではなく、自分の意見を主張したことで、能力が高くリーダーとしての適性があるにもかかわらず適正な評価を受けられない例はどの職場でも起こりうる。
本書では、こうして埋もれた人材を発掘するために、疑似的な「修羅場」に社員を送り込む実務体験型のシミュレーション研修を提案している。それによって、職場での評価はいいが、研修での評価が悪いというケースやその反対のケースが出てくる。