5.ペラペラのエコバッグを持って会食――元ソニー社長 出井伸之氏、東大名誉教授 黒川清氏
ペラペラのエコバッグは一例であり、トップリーダーたちは自身の服装や鞄に対してあまりこだわりを持たないことが多いという。
トップリーダーたちはどこかに「ヌケ」を作っていることが多い。「ヌケ」とは、おおよそトップリーダーらしさとは正反対の、一般人に「自分たちと同じだ」と思わせてくれる部分である。そうした「ヌケ」の部分が魅力になり、人々から語られたり、メディアからの反応も良くなるのだという。
6.社員から「社長」と呼ばせない――元エルピーダメモリ社長 坂本幸雄氏
坂本氏は「半導体業界の救世主」とも言われる、知る人ぞ知る名リーダーだが、会社では自分のことを「社長」と呼ばせなかったそうだ。「坂本さんでいい!」と。
肩書ではなく名前で呼ぶことは、親近感を覚えさせる。著者によれば、海外の企業では、大企業においても社員が社長のことを「ジョン!」などとファーストネームで呼ぶ文化があり、闊達に意見を述べられる空気ができているという。日本ではあまりファーストネームで呼ぶ文化はないが、もしもっと社内を活発にしたいと考えているならば、試しにやってみるのもいいのかもしれない。
7.ジョークが上手――経済学者 ポール・クルーグマン氏、哲学者 マイケル・サンデル氏
この2人に限ったわけではないが、トップリーダーたちに質問を投げかけると、ユーモアをもって返答してくれることが多い。ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン氏は、ジョークを交えて場を和ませながら話をする。また、サンデル氏も相手を笑わせながら話をしてくれるそうだ。
ギャップを演出して笑わせたり、その場にいる人たちとの共通点を言ってホッとさせたりする話し方は、自分自身を身近に感じてもらうためのイメージ作りとしては最適だ。
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『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』に書かれているトップリーダーたちの自然体エピソードを並べていくと、彼らはある意味で、戦略的に「自然体」の姿勢を取っていることがうかがえる。しかし、それは自分のための戦略ではなく、もっと大きなもののための戦略だ。
金太郎飴のようにどこを切っても同じリーダーでは、面白さも生まれず、差別化も図れないだろう。
完璧なリーダーよりも、多少ダメな部分があっても人を楽しませてくれる、夢中にさせてくれるリーダーに、人はついていくのである。自身がリーダー的存在であっても、そうでなくても、リーダーという存在について考える上で、大いに参考になる一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。