リーダーシップのある人というのは、揺るがない信念を持っていてブレない人というイメージがあるかもしれない。
しかし、ブレることは実は大事だ。変化の速いこの時代において、考えていたことを貫き通しても成功できないことはいくらでもある。失敗しないようにするにはブレることも重要なのだ。
実際に、Amazon.com創業者のジェフ・ベゾスや米国フォード経営再建の立役者アラン・ムラーリー、IMF専務理事クリスティーヌ・ラガルドなど、優れたトップリーダーの多くは、一度決めたことにこだわるようなことはせず、説得を受け入れ、ブレることで成功をおさめている。
『すごいヤツほど上手にブレる』(アル・ピタンパリ著、岩崎晋也訳、TAC出版刊)では、説得を受け入れる柔軟性を身につける方法を解説。 本書では、認知心理学と社会心理学の最新の成果をふまえた、説得を受け入れる柔軟性を身につけるための7つの実践を紹介している。
・逆を考える
・信念を徐々にアップデートする
・最愛のものを葬れ
・他者の視点から見る
・説得されすぎない
・ほかに先駆けて転向する
・自分の部族(同胞)に働きかけよう
これらの行動習慣は、世界最高のリーダーたちの成功を促してきたものなのだ。
Amazon.com創業者のジェフ・ベゾスは、一度決めたことはやり抜くというよりも、固い信念を決して持たないようにしているという。アマゾンを成長させていくなかで、彼は何度も考えを改め、多くの計画を放棄している。もちろん彼は意志薄弱ではなく、はっきりとした自分の見解を持っている。ただし、自分の見解をあくまで一時的なものとみなしているのだ。
ベゾスは、7つの実践のうちの「最愛のものを葬れ」を実際に行っている。
2004年、ベゾスは最も信頼する役員であり、主力部門の書籍部門を担当するケッセルを呼び、電子書籍を任せることを告げた。電子書籍への参入はアマゾンの伝統であった紙の書籍販売にダメージを与えることになるため、ケッセルは混乱してしまう。
ベゾスはこうした利害の衝突が生じることを理解したうえで、「書籍販売に携わっている人から仕事を奪うつもりで進めてほしい」「最愛の自分のビジネスを葬ってほしい」とケッセルに告げる。伝統的なビジネスを守ろうとする気持ちが働けば、アマゾンは新たな機会をつかむ力を失ってしまうと考えたからだった。
ケッセルは電子書籍部門のトップに就き、10年後の2014年にはアメリカ国内での電子書籍販売の65%をアマゾンが占めるまでに事業を拡大した。
信念を曲げたり、考えを翻す、といったことに抵抗を感じる人もいるだろう。もちろん自分の意思や意見を持つことは大事だが、人の意見を聞くことや説得を受け入れるという柔軟性も大切だ。 ブレることも、リーダーとなる人の重要なスキルのひとつなのだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。