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たとえば、自動車保険業界がそうだ。AIによる自動運転が始まれば、自動車事故はほとんど起きなくなるだろう。自動車保険は事故のリスクがあってこそ成り立つ。事故が無くなればそもそも保険自体が必要なくなるのだ。
世の中には、「今のビジネスの仕組みだから必要な仕事」は多い。予想だにしない「仕事消滅」も起こり得るかもしれないのだ。
■AIによる「仕事消滅」は不幸な未来を招くか
仕事が大量に消滅するという未来は、その過程において、社会的、経済的混乱を招きかねない。著者は、その問題に対して経済学的な視点からかなり具体的な提案を示している。
人類の仕事を奪うAIやロボットは、本来、人間の仕事を進んで代わってくれる便利な存在だ。それが社会問題や不安を招くのは、人間の仕事が「手伝われる」のではなく「奪われる」からだ。
ロボットが人間の仕事を奪ってしまう理由は、「人間と違って、ロボットは極端に安価なコストで仕事を請け負ってくれる」という無意識の前提があるからだと、著者は述べる。どんな経済でもダンピングをする競争相手がいれば競争にならない。
そこで著者が示す解決策が「AIやロボットに給料を支払う」という案だ。
仕事が消滅し、大量の失業者が増えれば経済は縮小する。だが、AIとAI搭載ロボットのコスト競争力を人間と同等かそれ以下に下げる政策があれば、不幸な未来を回避できる可能性が上がる。
著者は、そのためには3つの原則が有効だと述べる。そのあまりにも大胆と思える提言はぜひ本を開いて確認してほしい。
「仕事がなくなるのでは……」と未来を憂う前に、今のうちにどのような社会がやってくるのか勉強しておくことが大切だ。その意味でも本書は大いに参考になる一冊である。
(ライター/大村佑介)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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