一流のビジネスマンや成功している起業家が、必ず読んでいる一冊というものがある。『ハイパワー・マーケティング』もそうした書籍の一つだ。
本書は、過去に二度刊行され、その内容の濃さから長らくコンサルタントやマーケッターのバイブルとなったベストセラーだ。現在書店で見かけるマーケティングにまつわる書籍の多くは、少なからず本書から影響を受けているか、その内容を細分化して語っているにすぎない。
そんなマーケティングのバイブルの新訳として『新訳 ハイパワー・マーケティング あなたのビジネスを加速させる「力」の見つけ方』(ジェイ・エイブラハム著、小山竜央監修、KADOKAWA刊)が刊行された。
本書が「新訳」として刊行されたのには理由がある。
著者によれば、過去2冊の前訳はテクニック重視の翻訳となり、ビジネスの本質を語る部分が抜け落ちているという。また、原書に記されていたはずのインターネット・マーケティングに関する章も前訳ではカットされていた。
本書では、マーケティングでもっとも重要な本質の汲み取りと、洞察に富んだ項目の復活によって、マーケティングの原理原則をより深く理解できる内容になっているのである。
■ビジネスを大きくするたった3つの方法
今やビジネスは多様性の時代だ。それはビジネスの種類、顧客のニーズ、販売戦略などの多くの面で言えることだろう。しかし、どれだけ時代が変わっても、「ビジネスを大きくする方法はたった3つしかない」と著者は説く。
1.クライアントの数を増やす
2.クライアント1人当たりの平均販売額を増やす
3.クライアントが購入する頻度を増やす
数多あるマーケティングの手法は、この3つの原理原則を出発点にしているものだということをまずは押さえておきたい。
これら3つの方法のどこに注力して、そのためにどんな手法を使うべきなのか、それがマーケティングを考える上での原理原則なのだ。
例えば、1人あたりの販売額を増やすなら、自動車の販売がわかりやすい。購入者は自動車以外にも様々な商品やサービスを一緒に買ってくれる。また、購入頻度を増やすために航空会社などはマイレージ制度を設けている。
■「顧客」と「クライアント」の定義を知る
著者は、「顧客」と「クライアント」という言葉に大きな違いがあると指摘されている。
顧客とは「商品やサービスを購入してくれる人」であり、クライアントは「他人の保護下にある人」だという。そして、ビジネスの対象を「クライアント」と考えるようにしてほしいと述べる。
つまり、「一回で最大限の利益を得るためだけに商品やサービスを売る対象として見るな」ということだ。
たとえば、電装ドリルの購入を考えている人がいるとする。
しかし、この人が欲しているのは実は電動ドリルではなく、何かを差し込むための「穴」だろう。もしかしたら、本人が気づいていないだけで、「穴」よりも「接着剤」や「フック」の方が問題解決に適しているかもしれない。