今も昔も、中小企業経営者の悩みは人材育成である。
売上や利益でも悩むだろうが、そうしたお金の悩みが行き着く先は、結局は人だ。
経営者の考え方やビジョンを深く理解して、その実現に動くことができる人材、つまりは自分の代わりになってくれる人材がいれば、売上も利益も(経営者の舵取りが間違っていなければ)上がっていくはずのものだからだ。
ここで問題になるのは「経営者のビジョンを理解し、共鳴する人材をいかに作るか」ということ。
これはとても難しい問題のように思えるが、案外そうでもないのかもしれない。少なくとも、人材育成についてのロングセラー『図解 3ステップでできる 小さな会社の人を育てる「人事評価制度」のつくり方 CD-ROM付』(山元浩二著、あさ出版刊)で提示されている方法はシンプルなものである。
■中小企業で人が育たない本当の理由
この本では、中小企業の人材育成に不可欠なものとして「人事評価制度」を挙げる。
小規模な会社だとそもそも人事評価制度が存在せず、「社員の評価は社長の胸三寸」ということもあるが、社内に人事評価制度があればOKかというとそうではない。人事評価制度で肝心なのは「ゴールをどこに設定するか」だからだ。
人事評価制度の目的は、「評価結果を昇給、賞与に反映させること」だと思われがちだが、そうではない。
昇給、賞与への反映はあくまで一つの機能。これで終わっては、昇給があれば喜び、減給になれば不満を持つだけだ。社員の成長が望めないばかりか、モチベーションアップとしての効果も一時的なものになってしまう。
■「人事評価制度は賃金を決めるためのもの」ではない
本書では、人事評価制度を単なる昇給・減給の基準ではなく、会社が一体となって目標に向かい、社員が充実感ややりがいを持って仕事に取り組むためのツールとして扱っている。
だとしたら、人事評価制度は経営者のビジョンや経営計画と連動していないと意味がない。しかし、実際には「経営計画は数値目標達成のためのもの」、「人事評価制度は賃金を決めるためのもの」と、それぞれ別個のものとして運用されていることが多いようだ。
経営者が目指すビジョンを人事評価制度と連動させることで、「会社がどの方向にいきたいか」「そのためにどんな人材が必要で、どんな人材を評価するか」が明確になる。当然、賃金に反映されるため、会社が目指す方向と社員の成長のベクトルが揃うのだ。
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本書では、「ビジョン実現型人事評価制度」と名付けられたこの人事評価制度について、経営者のビジョンの示し方や、人事評価制度の設計上のポイントなど、実施までに必要な各要素について詳しく解説されている。
研修に十分なリソースを割けない中小企業は、OJTで人材を育てていくしかない。本書で明かされている人事評価制度はその成果を大いに高めてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。