出社してからのルーティンとして、「朝イチにメールチェック」をしていないだろうか? 実は、そのルーティンは残業を増やす働き方だ。
『朝イチのメールが残業を増やす』(菅原洋平著、日本経済新聞出版社刊)は、そんな残業が増えるNGな働き方とその解決法を紹介した一冊。
本書では、高次脳機能障害を患者のリハビリなどを行う作業療法士としての治療ノウハウを熟知した著者が、様々な業種の現場で労働生産性を高めることに成功した「脳の働きをうまく使った残業しない働き方」を紹介している。その中からいくつか「残業する人」がやってしまう働き方と、その解決策を紹介しよう。
■朝一番の「メールチェック」はNG
ほとんどの人は、朝、出社したら「メールチェック」から始めるのではないだろうか。
通勤中に出社してからの仕事の段取りを考えながら、いざ出社。しかし、デスクに座るなりメールチェックを開始すると、返信や社内での対応が必要なことがわかり、せっかく考えた段取りはどこかに吹き飛ぶ。結局、本格的に仕事を始めるのは1、2時間後――こんな経験をしている人は多いはずだ。
「すぐに返信しないといけないメールが来ていたら困る」という気持ちはわかるが、朝イチのメールチェックは残業する人の典型パターンである。
著者が関わったある企業グループで「朝イチのメールチェック」をやめたところ、多くの社員の働き方が改善。通勤中に頭の中で考えた段取りを出社直後に終わらせることができた。さらに、その後にメールチェックを行っても、仕事にはまったく支障がなかったという声が社員たちから多く聞かれたという。
朝イチのメールのチェックを後回しにすると、自分のペースでコアな仕事に着手できる。このメリットは大きいだろう。
■「交渉」を午後に回すのはNG
クライアントの訪問は午後からというスケジュールで動く人も多いだろう。しかし、これは人間に備わった「体内時計」に合ったスケジュールで考えるとNG。交渉は、午前の終わり頃にするのがベストだという。
起床8時間後にさしかかる午後は、脳の覚醒が低下し始める時間帯。間延びした話が続いたり、時間をかけても成果が出にくくなったりして、結果、残業が増えることになる。
一方、起床5時間後は、白血球のリズムにより一日の中でもっとも免疫力が高まり、ストレスを感じにくくなる時間帯。つまり、午前の終わり頃はメンタル的にもっともタフな時間なのだ。
このタフな時間を、思い切った提案や踏み込んだ話に使っていくと生産性は高まるという。
商談や交渉をする人の中には「アポイントを11時に入れると、相手に受け入れられる可能性が高い」と語る人も多いそう。経験則から、体のリズムに適したスケジュールを自然と選んでいるのかもしれない。
■「会議の議事録」を書く前に休憩するのはNG
パソコンやスマホで文章を入力すると、予測機能で定型文が表示される。この文章の定型文のように、脳に「定型動作」を覚えさせることで滞りがちな作業をスムーズに進めることができると著者はいう。