ビジネスジャーナル > キャリアニュース > うつ病患者が語る うつ病の裏側  > 2ページ目
NEW

うつ病患者たちが語る、社会から脱落したワケと、失ったもの/得たものとは?

【この記事のキーワード】

――著作の『ゆううつ部!』の中に、何度も出てくるキーワードとして「カミングアウト」という言葉がありますね。そもそも、社会から脱落した感覚にある状態で、自分がうつ病であると周囲に伝えることは必要なのでしょうか? 場合によっては、自分から大きなハードルをつくることになりませんか?

東藤 ものすごくセンシティブな問題であることはわかった上で、早めにカミングアウトしたほうがいいと思います。というのは、カミングアウトしないでいると、周りの人が全員敵に見えてしまうからです。

 言って拒絶されるかもしれないけど、受け入れてくれる可能性だってある。たった一人でも受け入れてくれる人を作るために、カミングアウトは早めにしたほうがいいと思います。と言っている僕も、カミングアウトのたびに泣いていたので、ハードルが高いのはよくわかるのですが。

――東藤さんが出会ってきたうつ病経験者は、社会復帰を果たしたとは思えないほど追い込まれた時期があって、中にはカミングアウトと自己否定をセットにして「こんな自分はダメだ」と、さらに自分を追い込んだ人もいます。うつ病とは、そういうものなのでしょうか?

東藤 それこそが、うつ病なのではないでしょうか。自分を責めるのが代表的な症状のひとつなので、仮に会社に原因があっても、最初は会社のせいだと思えない。僕は、うつ病に罹患した会社員時代は、終電までルーティーンワークをやって、残りの仕事を終電後か土日にやっていました。それもバイトより安い給料で。「土日のどちらかだけでも休みたいな」と思いながら働いていたら、うつ病になってしまったのですが、「なんて自分はダメなんだ」と思って、さらに追い込んでいました。今は「あの会社が悪い!」と思います(笑)。

――さまざまなうつ病経験者に会ってきた東藤さんが考える、“うつ病になりやすいタイプ”というのはありますか?

東藤 僕は基本的に、責任感や能力のある優秀な方が、うつ病になるような気がしています。『ゆううつ部!』に登場してくれた対談相手の一人で元ギャルの子がいるのですが、彼女も「ちゃんとコミュニケーションを取らなきゃという、変なプレッシャーを感じていた」と言っています。真面目で、全体を分析的に見ることができる人なんだなと思います。あとは「自分はうつ病にならない」と思っている方。ストレスを軽減しようとせずに、正面から向かい合ってしまうので危険だと思います。

――この記事を読む人の中には「自分も、うつ病かもしれない」と思っている人も多いと思うのですが、初期段階にこうしておけばよかったということはありますか?

東藤 なるべく早く病院に行くべきだったと思います。初診は心療内科でも大学病院でも曜日が決まっていて、診察の枠が埋まっていることが多いです。僕は過労でうつ病になったんですけど、最初の病院は初診まで2~3週間待たなければいけなくて、その間、うつ病のまま徹夜で残業していて、大変きつい思いをしました。どこでもいいから早く診てくれるところを探せばよかった。病院は、早く行くに越したことはないと思います。

――現代社会では「自分はダメなんだ」と追い込まれている人が少なくないはずです。もし、うつ病の症状が発症した場合、治療することは可能なのでしょうか?

東藤 通院すれば、医者が治してくれると思っている人も多いかもしれませんが、休養と通院だけでは、元の70~80%までしか回復しないのではないでしょうか。徐々に回復していったとして、100%元通り働いたり家事ができるかというと、できないケースの方が多いと思います。これには、うつ病特有の目に見えない病であることが関係しています。

 例えば足を骨折したとき。ギプスをして松葉杖をつけば外には出られるけど、そこから歩いたり走ったりしていく過程には、自分の頑張りと周囲の理解が必要ですよね。少なくとも「ジョギングしなさい」とは言われない。ところが、心につけたギプスは見えないので、「8割程度回復した、ギプスの取れかけた状態」だったとしても、周囲にわかってもらえない。職場からは「走れるでしょ?」と思われてしまう。

――周りにいる人は、うつ病の人に対して、どう接すればよいのかについても教えていただけますか?

東藤 普通に接してもらって、その上で「これは大丈夫?」と聞いてもらえると楽ですね。以前とあまりに態度が違うと、うつ病の人が「自分はもう昔の自分ではなくなってしまったんだ」と思ってしまうので、従来と同じように接しつつ、キツイかな? と思えるときは、その都度質問するくらいでいいと思います。ポプラビーチで連載していた時も、担当編集者さんは全然特別扱いしてくれなかったけど、なんとか大丈夫でした(笑)。

 一緒に出かけるのであれば、うつ病の人の「休憩」は「眠りに落ちるくらいリラックスする」であって、「お茶しておしゃべり」ではないということを知ってもらえれば助かります。そんなわけで、体力面だけ配慮してもらえればいいと思います。

 あとは「話を全部聞くよ」というよりは、「1日に1時間なら話を聞くけど、それを過ぎたら自分のことをするからね」と具体的にはっきりルールを決めるほうが、消耗せずに付き合いやすいと思います。

――うつ病になって失ったものはなんですか?

東藤 失ったものはいろいろありますね……。体力、集中力……意識を失ったことがあるので運転もできない……。

――反対に、回復していく過程で得たものを教えてください。

東藤 「こうあるべき」という考え方がまるっきりなくなって、いろいろな選択肢を考えるようになりましたね。かなり柔軟になったと思います。

 また、自分のセンスや判断力はどういう状況でも失われない、ということは自信になります。そういう能力を使う仕事ならば、できると思えるわけです。残ったものこそが自分の核であって、そういうところは揺るがないんだと感じました。

――最後に、現在、うつ病に直面している人に向けてのメッセージをお願いします。

東藤 無理せず、ゆっくりいきましょう。きっと社会に居場所はありますから。
(文=丸山佑介)

●東藤泰宏(とうどう・やすひろ)
1981年生まれ。IT業界で働くうち、過労のためにうつ病となる。
1年半のうつ病ニート時代を経て「ゆううつ部」(ブログ)を開設。
2011年にスカイライトコンサルティング主催の「起業チャレンジ2011」で最優秀賞を獲得。
その賞金300万円で起業。仲間を集め、12年1月にU2plusを公開。
新たな資金調達にも成功したが、まだ絶賛うつ病中。
株式会社U2plus

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

うつ病患者たちが語る、社会から脱落したワケと、失ったもの/得たものとは?のページです。ビジネスジャーナルは、キャリア、の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!