今、注目を集めている臓器といえば「腸」です。“第二の脳”といわれ、神経伝達物質であるセロトニンの大半は、腸の中にいる腸内細菌が作っていることがわかってきたほか、腸内環境の良し悪しは、美容や健康にも大きな影響を及ぼします。
「長寿の人は、みんな腸が元気。逆に、腸に不調をきたす人は、長生きできません」というのは、医学博士の松生恒夫さん。松生さんによれば、人間の免疫システムの約60%は腸に集まっていて、腸が健康でないと、病気になりやすくなったり、老化が進みやすくなったりするといいます。
では、どうすれば腸を健康に保つことができるのでしょうか。松生さんの新刊『長生きしたけりゃ、腸は冷やすな』(主婦の友社/刊)から、腸内環境を整えるのに効果的な食事や生活習慣についてご紹介します。
●“腸の冷え”にはカレーが有効
猛暑の屋外から冷房のきいた涼しい室内に入り、「お腹が冷えた」と感じたことがある人は多いはずです。この“冷え”というのは、東洋医学で使われる概念で、西洋医学では「循環不良」「代謝の低下で起こる血行不良」になります。便秘や下痢などの身体の不調を招くだけでなく、腸の免疫力を弱らせるなど、まさに万病の元ともいえるものです。
この“冷え”は食事によって体を温めるという方法で対策が可能です。そして、腸を温めて働きを活性化させる代表メニューが「カレー」なのです。
特に松生さんが勧めるのが、30種類以上のスパイスから作る、いわば本格派のカレー。例えば、スパイスの一つであるターメリックは、日本では「ウコン」として親しまれており、生活習慣病の改善に効果があるといいます。他にもシナモンやジンジャー、クミンなど、様々なスパイスが豊富に使われているカレーは、体の保温力に優れているのです。
ただ、市販のカレールーはスパイスの量が少なく、調味によってカレーの味に仕上げられているので、健康を考える場合はスパイスから手作りしたほうが間違いありません。
●健康効果に優れた油、エキストラ・バージン・オリーブオイル
日本は世界に誇る長寿国ですが、同じように長寿が多いのが、サンマリノや地中海沿岸の国々です。この地域は、がんによる死亡者が少ないことで知られています。
その長寿の秘密は、オレイン酸の宝庫であるエキストラ・バージン・オリーブオイルにあると松生さんは言います。オリーブオイルには、高脂血症の改善やアンチエイジングに欠かせない抗酸化成分が4種類(ポリフェノール、ビタミンE,葉緑素、オレイン酸)含まれているほか、カルシウムの吸収を助けたり、ピロリ菌を抑制するなど、その働きは枚挙にいとまがないほどです。
さらに、オリーブオイルを一時的に多量摂取した場合、短時間では小腸で吸収されにくいという検証結果があり、この「吸収されにくさ」が腸内のすべりをよくし、便秘解消に良い効果を与えるのです。オリーブオイルを食卓の中で少し取り入れるといいかもしれませんよ。
●寝る直前の食事は厳禁
夜遅くまで働いていると、どうしても夕食の時間も遅くなり、食べてすぐに寝るという生活習慣が染みついてしまいがち。しかし、その生活習慣は、十二指腸からモチリンというホルモンを十分に分泌させなくなり、冷えや肥満、腹部膨張感や便秘の元になります。
このモチリンというホルモンは、いわば深夜の腸内のお掃除屋さん。寝ている間に消化管の内部をきれいに掃除し、朝の食事や排便に備えてくれるのですが、空腹の状態でなければ十分に分泌されないという特性を持っています。
そして、掃除が不十分だと、腸内の便や老廃物が完全に排泄されず残ってしまい、老廃物が腸内で腐敗。腸の環境は悪化してしまうという悪循環に陥ります。
そうなることを防ぐためにも、就寝1~2時間前にはリラックスし、深く睡眠できる環境を整えましょう。
本書を読んでいくと、いかに私たちの生活の中に腸内環境を悪化させるものが蔓延しているかがわかるはずです。
そうしたものを全て排除することは難しいですが、腸に良いことをひとつずつ実践することなら可能なはず。毎日を元気に過ごすためにも、腸内環境に気を使ってみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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