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世界経済は「食べもの」から学べる!? 砂糖から見る世界史

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※画像はイメージ(新刊JPより)。

 経済歴史が苦手…という人でも、日頃食べている砂糖や小麦、トウモロコシ、大豆、豚肉、インスタントラーメンといった食べものの話から入れば苦手意識も薄れるはず。

 『食べものから学ぶ世界史: 人も自然も壊さない経済とは?』(平賀緑著、岩波書店刊)は、食べものの歴史を通して資本主義経済の歴史とカラクリを紹介する。

世界史は「食べもの」から見えてくる


 ポイントは、いかにお金で計られる部分だけを増やそうとしてきたか。たくさん作った商品をいかに売り続けようとしたか。そして、労働者の胃袋をいかに安く早く満たそうとしたか。その過程で、生命の糧であるはずの食べものが、儲けるための商品へと変わっていった。本書は、この食べものが商品へ変わったところから、資本主義経済の成り立ちをまとめた1冊だ。

 人類はもともと、自分たちが食べるモノ、必要なモノは自然から分けてもらい、同時に自分たちでも作り、そのための知識やスキルや自然環境を社会の共有財産として護り育ててきた。それが大きく変わったのが産業革命以降である。人々は生活から離れた場所に、賃金を得るために働きに行くようになり、資本家はそんな労働者を雇って、売って儲けるための商品を大量に生産するようになった。そして、人間が生きていくための食べものも市場経済に組み込まれ、お金を儲けるための商品に変わっていった。

 たとえば、料理やお菓子作りに欠かせない砂糖。砂糖が広く行きわたったのは、実は案外最近のことだ。

 砂糖の主な原料だったサトウキビは、熱帯性の高温の気候と広大な土地と膨大な労働力を必要とした。砂糖はイスラム文化を通じて伝えられたとても貴重な品物だったが、ヨーロッパでは栽培できなかったようだ。

 当時、ヨーロッパでは甘味といえば果物や蜂蜜があるだけだった。砂糖は17世紀半ばまでは、王様や貴族が薬としてほんのわずか口にできるような貴重品だった。18世紀半ばには砂糖を入れた紅茶や糖蜜が普及し始め、19世紀半ばになって価格が急落し、英国労働者たちの日常的な食事になるまで安く広がるのだが、それは供給増が理由だ。急激に砂糖の生産が増えて価格を下がり、労働者の間にまで広がった背景には、サトウキビが育つ熱帯地方の植民地の武力を伴う取り合いや征服と支配、奴隷労働など、血と涙の歴史がある。

 食や農は、自然や文化や人間の本能として語られることも多い。だが、食べものの世界、歴史を紐解いていくと、ドロドロとした政治経済の話が多く、世界の歴史と経済が密接に関わっている。現在私たちが、砂糖や小麦粉がなぜ、当たり前に食べることができるようになったのか。身近にある食べ物は高い確率で世界とつながっていることを、本書を読めば実感できるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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