150億円のフェルメールの最高傑作絵画が、偶然を重ね今まで残存した驚きの理由
「随分前に、世界的に有名なファッションブランドの展示会で、ビニールバッグを3000円くらいで購入したのだけれど、実は、その展示会でのみ購入することができたレアな限定品だったらしく、今、メルカリにて数万円で取引されている」
このように友人から聞いて、驚いてしまいました。コレクターにとっては、もう手に入らないものなので、骨董的価値が出ているようです。
こういったことは、絵画でも同じです。現代アートなどを見ていると、その絵がなぜそれほど高い価値を持っているのかよくわからないこともありますが、世界で1枚しかない絵であり、たとえ欲しい人が少数であっても、彼らの中で値段がドンドン上がっていくのでしょう。
今、日本でも大人気の画家、フェルメールの名作「窓辺で手紙を読む女」に関する新しい発見が、世界の注目を浴びています。若い女性が窓辺で手紙を読んでいる絵なのですが、背後は灰色の壁のみなので、あまり裕福な家庭の女性ではないのだろうと勝手に思っていました。しかし、その壁には愛の天使・キューピッドが描かれていたことが、近年のX線調査によって発見され、それを復活させる作業が行われているようです。
この発見により、陰気臭い部屋の中で、まるで借金の返済要求通知でも読んでいるように見えた女性が、実は胸を高鳴らせながら恋人からのラブレターを読んでいるのだということがわかったのです。
では、誰が17世紀オランダを代表する画家のひとりであるフェルメールの絵を台無しにしたのでしょうか。実は、フェルメールは18世紀に入って、急激に忘れ去られてしまったことが知られています。そこで、この絵を手に入れた画商が、フェルメールと同時期のオランダ人画家のレンブラント作品として高く売ろうと画策し、あろうことか天使を灰色で塗りつぶし、18世紀になっても人気が高かったレンブラント風にしたのではないかと言われています。その証拠に、レンブラントの絵として、ザクセン選帝侯でポーランド王も兼ねていたアウグスト三世に売却されています。
ちなみに、この王様は、政治には興味も才能もなかったのですが、音楽と絵画に興味を示し、首都ドレスデンに美術コレクションを持つほどでした。そんな絵画好きの王様が悪い画商にまんまと騙されたのは皮肉な話ですが、そのおかげで現在、世界に35点しか残っていないといわれているフェルメールの貴重な絵画の1枚が、後世に残されることになったわけです。もし、レンブラント風に描き直していなかったとしたら、フェルメールの名作が適当に扱われ、ほかの作品と同様に紛失してしまったかもしれません。