遠いようで意外と身近な「逮捕」。最近では、パソコン遠隔操作ウイルス事件で誤認逮捕が発覚したのが記憶に新しいと思います。また痴漢冤罪なんて事を考えれば、いつ自分に罪がなすりつけられたのか分からないまま、手錠をかけられて留置場行き…なんて事態は、決して絵空事ではありません。
では、実際に逮捕されたら一体どんな目に合うのでしょうか?
どのようなステップを踏んで“シャバ”に戻れるのでしょうか?
その疑問に、軽妙な筆致で答えてくれるのが『逮捕されたらこうなります!』(Satoki/著、國部徹/監修、自由国民社/刊)です。
著者のSatokiさんはウェブライターとして活躍していますが、2012年に事件に巻き込まれ、逮捕されてしまいます。その後、不起訴になり、釈放後、刑事手続を勉強し、自身の体験を生かして刑事事件に関するボランティアを行っているそうです。
逮捕された容疑者が手錠姿で警察署に連行されていくシーンは、よくTVのニュースでも報道されています。そんな容疑者が警察署に連れて行かれた後、警察署内でどんな取調べを受け、どういう手続きで留置場に入れられるのかはあまり知られていません。
初めて逮捕されてしまった多くの人の中には、
「自分はこれからどんな目に遭い、どのくらい留置場に入れられていれば、シャバに戻れるのだろう?」
といった“先の見えない不安”によって心のバランスを失い、孤立無援の拘束状態の中、警察の捜査員や検事から厳しい取調べを受けて、やってもいない冤罪を認めてしまうケースも少なくないのです。
そんな“はじめての逮捕生活”で、何が起こるのか? 逮捕されちゃった場合、どんな権利があって、どうしたらいち早くシャバに戻れるのかを解説したのが本書になります。
その中でも、役立つ情報として挙げられるのは「弁護士の選び方」でしょう。弁護士は被疑者(罪を犯したと疑われている人)にとって、声を上げることのできる唯一の味方ともいえる存在。Satokiさん自身、不起訴を勝ち取れたのは、弁護士先生のおかけだと語っています。
被疑者が勾留中の場合、自由に面会(接見)ができるのは弁護士だけです。被疑者の接見が禁止されていても、弁護士は例外です。
弁護士との接見は、取調べの最中でも就寝時間帯でも可能です。ただし、場所は留置場の接見室のみに限られ、弁護士を呼んでから接見に来るまで、若干のタイムラグがあります。
そんな強い味方の弁護士ですが、どのように選ぶのでしょうか。
一般的に刑事事件に関係する弁護士には「国選弁護士」「私選弁護士」、そしてあまり知られていない「当番弁護士」がいます。もちろん職業的には全員普通の弁護士なのですが、被疑者との関わり方で呼び名が違ってきます。
この中で、「当番弁護士」は逮捕された瞬間から、いつでも呼ぶことができます。しかも、初回のみタダ。
これは、友人や知人に弁護士がいないような“弁護士を呼びたくても呼べない人”のために1992年に導入されたシステムで、警察の捜査員や留置場の担当に「当番弁護士を呼んで下さい」と要望した場合、ほぼ24時間以内に当番にあたっている登録弁護士と接見できるのです。なので、勾留された場合、多くの人はこの当番弁護士制度を使うことになるはずです。
さて、残る2つですが、「国選弁護人」は、国が弁護士を雇ってくれるシステムです。2006年までは起訴後にしか国選弁護人をつけることはできなかったのですが、改正刑事訴訟法により逮捕容疑が比較的重い犯罪(死刑か無期、あるいは最高懲役が3年を超えるもの)で逮捕勾留されている場合に限り、起訴前でも国選弁護人を付けられるようになりました。
「国選弁護人」のメリットは、弁護費用が基本的に政府持ちになるという点だけで、どんな弁護士が選ばれるかは運次第というデメリットもあります。そもそも国選弁護人を雇えるケースは、貧困などの理由で私選弁護人を選任できないときに限られるので、まさに、「出たとこ勝負」的な要素が強いといえます。
一方の「私選弁護人」は被疑者が自腹を切って雇う弁護士です。信頼できる弁護士に任せることができる点はメリットですが、知人に弁護士がいない人はどうすればいいのでしょうか。近年多いのは最初に当番弁護士を呼んでもらい、その弁護士が頼りになると思えば、その場で私選弁護人として契約を結ぶというパターンなのだそう。
こうした形で弁護士にアドバイスを求めるのですが、前述のように、逮捕された後、周囲にいるのは罪を自白させようとする取調べのプロたちだけです。一方、被疑者は素人。もし罪を犯していないのにも関わらず、早く釈放されたいがために自分の罪を認めるような発言をしてしまえば、その瞬間にオシマイです。その言葉は調書に記録されてしまいます。だからこそ、アドバイスをくれる弁護士は強い味方になるのです。
ちなみに、「おいそれと弁護士を呼んでもいいの?」と思う人もいるかも知れませんが、弁護士を呼ぶ権利は憲法(第37条)や刑事訴訟法(第30条)で保障されています。
『逮捕されたらこうなります!』は逮捕や留置場の様子、取調べ、そして釈放まで、一連の流れを、実体験を交えて紹介しています。いつ誰に犯罪の容疑がかかるかわからないこの時世ですから、一度は読んでおきたい一冊です。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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